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日大アメフト問題に見る球界監督論。
時代は「ボス」から「リーダー」へ。 

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小西斗真

小西斗真Toma Konishi

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photograph byKyodo News

posted2018/06/07 11:15

日大アメフト問題に見る球界監督論。時代は「ボス」から「リーダー」へ。<Number Web> photograph by Kyodo News

サヨナラ打を放った選手と抱き合うDeNAラミレス監督。チームは6月5日現在、23勝25敗2分、首位広島と5ゲーム差の2位にいる。

プロ野球の「故意死球」はどうなのか。

 最後にかつては球界にも存在したと言われる「故意死球」について、50歳代の元投手に話を聞いた。

「ありました。全部で10回前後はあったはずです。もちろんベンチの指示ですよ。監督であったり、コーチであったり。自分のように中継ぎをやっていると、出るまでに大差がついたり、こっちの4番が当てられていたりと試合が動いているので、条件がそろっていることが多いんです。

 厳しく攻めるというのとは全然違います。あれは『当たっても仕方ないくらいのつもり』ですから。言葉としては『行ってこい』。これを言われると当ててこいという意味です。できなかったら? できませんでしたじゃすみません(笑)。罰金です」

 この元投手は喜んでやっていたわけではないが、良心の呵責にさいなまれてもいない。もちろんどの球団も似たり寄ったりだった。

 つまりお互い様という時代背景は大きいが、少なからず「味方のあいつも当てられたんだから」というそれなりの理由があったことや「そういうケースは当てられる打者もわかっていた」ことも影響している。

メジャーでは今も報復死球は当たり前。

 メジャーリーグでは今も報復死球や乱闘は当たり前だ。こちらはベンチの指示すらなく、やられたらやり返すは公然の掟だが、元投手は「今の日本プロ野球に『行ってこい』はないと思う」とも証言した。乱闘などめったにお目にかからなくなったのは、その裏付けといえるかもしれない。

 かつての野球界にあった「行ってこい」は、今回の日大でいえば「つぶしてこい」。

 共通しているのはボスの指示であり、選手に拒否権はないということ。一方、大きな違いは死球という結果そのものが目的なのか、パスを終え、無防備なところにタックルし、ケガをさせることが目的だったのかという点だ。

 にもかかわらず、いざ騒ぎになったら「乖離」で逃げるのでは、ボス型かリーダー型かの前に人間性を問われて当然だ。その後の大学側の対応も含め、いつまでも後味の悪さはつきまとう。その上で今回の事件がプロ、アマ、競技を問わず、なお「そうあるべきだ」と信じるボス型指導者が、リーダー型への移行を決断するきっかけとなることを願いたい。

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日本大学
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