一軍と二軍を行ったり来たりする不安。

　清水コーチが話す。

「僕も選手時代のプロ1年目に全然結果が出なくて、2年目はファームで過ごして、上に上がって『さあ！』と気持ちも盛り上がったところで全然出番が来なくて、2週間くらい上にいたけれど、最初から最後までブルペンで準備、待機していただけってことがあったんです。

　そのときの不安な気持ちや、試合に入っているけど、試合に入っていないようなモヤモヤした疎外感みたいなものが、僕にもあったし、その気持ちは凄く分かるので、上（小林雅ピッチングコーチや井口監督）になんとか出番を与えられるようにって話をさせてもらいました。もちろん本人たちにも『ここだけは準備しておいてくれ』と伝えていましたけどね」

　こうした清水コーチの細かな配慮が、阿部には嬉しかったし、心強かった。

痺れるシチュエーションは最高の贈り物。

　清水コーチが続ける。

「先発投手が結果を残しているときというのは、裏を返せばチャンスを拾えていない投手というのが必ずいるんです。その辺りのケアが僕の仕事なのかなとも思っていますし、僕自身の課題でもあるのかなと。

　また、阿部とか南（昌輝）とか一生懸命（ブルペンで）やってくれている選手に、僕は助けられているとも思っているんです。そこは選手たちに感謝していますし、だからこそ、どこかでチャンスを与えたい。ここという場面のときに、万全の準備が出来るようにしてあげたいとも思っているんです」

　前述の6月3日の広島戦。1死満塁の窮地という痺れるようなシチュエーションで、今季初登板を与えられたのも、ある意味、最高の贈り物だったと言えるだろう。

「さあ、自分の想いの丈をぶつけて来い」

　そんな清水の声が聞こえてきそうだ。

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