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FC今治と岡田武史と東大卒の社長。
フロンターレを手本に熱の持続を。 

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海江田哲朗

海江田哲朗Tetsuro Kaieda

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photograph byTetsuro Kaieda

posted2018/06/02 07:00

FC今治と岡田武史と東大卒の社長。フロンターレを手本に熱の持続を。<Number Web> photograph by Tetsuro Kaieda

矢野将文社長(左)は試合開催日も岡田武史オーナーと議論を交わし、クラブをより良いものにしようとしている。

収容人員5030人に4000人を集めれば。

「当面の目標であるJ3昇格の条件は3つ。ひとつは財務条件のともなう経営環境の整備。ふたつ目がJFL4位以内で、かつ百年構想クラブのうち上位2クラブに入ること。最後が観客動員で、1試合平均入場者数が2000人を超えることです」

 JFL昇格初年度の2017シーズン、吉武博文監督に率いられる今治は6位に終わり、成績要件を満たせなかった。事業の多角化を進め、2017年度の営業収入は約6億3000万円と経営規模では抜けた存在だが、ピッチではまた別の力学が働く。

 一方、ホーム15試合の入場者数は3万2724人でリーグ最多。夢スタジアム開場以降の5試合は、1試合平均3700人を集めている。ここで、矢野が目をつけたのがスタジアム収容率だった。

「J1でトップクラスの川崎フロンターレがおよそ82%の数字を出しています。目指すなら、ここだと。夢スタの収容人員は5030人ですから、4000人強集めれば達成できる数字です。リーグのカテゴリーは違いますが、お客さんのにぎわいでは日本一の場所。サポーターと一緒になって目指す目標をつくりたかった」

ファンが当事者となる仕組みができている。

 今季の開幕戦は4493人を集めたが、以降は3000人前後のゲームが続く。人の心は移ろいやすく、熱を持続させ、さらに増幅させていくには一筋縄ではいかない。2000年以降のJリーグで、最大の成功例である川崎の凄みはそこにある。当然、矢野は等々力陸上競技場に何度も足を運び、現地の様子をつぶさに観察してきた。

「あそこにいけば楽しいことがある。その期待にずっと応え続けている証拠だと思います。人はやがて飽きるものですが、飽きさせないような工夫がある。加えて、意図したものか、結果的にそうなったのかわかりませんが、ファンが当事者となる仕組みができていますね。クラブが日常生活まで溶け込んでいるのが伝わってきます」

 いかに多くの人々の興味を惹き、一歩進んで入ってきてもらうか。矢野はその仕掛けに余念がない。会合やパーティなど、あらゆる場に出向き、自身を媒介としてクラブにつなぐ。

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