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魔術師マエケンが奪三振マシンに。
秘密は「技」と「力」のバランス。
text by
笹田幸嗣Koji Sasada
photograph byGetty Images
posted2018/05/29 11:30
快投が続く原因について、「投球フォームの微調整がうまく行っている」と前田本人は話している。
「初球とかはど真ん中でもいい。今は少し力で」
前田自身も驚きを隠さない。
「今までにない感覚。どっちかと言うと僕はコーナーを狙うイメージなんですけど、初球とかはど真ん中でもいいくらい。今は少し力で。まさかアメリカに来てこういう感覚で投げることになるとは思わなかった」
制球力で勝負して来た男がメジャーに来てから力勝負を挑む。しかも、彼は今、30歳だ。世間一般のイメージとは全く違う逆方向へのシフト。これほど興味深い事実はない。
前例のないムーブメントを引き起こした前田は相反する2つのキーワードが背景にあると説明した。それは『日本流からの脱却』と『日本流への帰還』だった。
「こっちの方が無茶苦茶ゾーンは狭い(笑)」
「日本にいた時は先を見据えながら投げていた。すごくいい結果に繋がったし、自分の中ではすごくプラスだった。それがこっちに来てからなかなか上手く出来なくて、ちょっと考え方を変えなきゃいけないと思った」
日本時代はボール球を使いながら打者を幻惑し1試合を投げ抜くための配球に重きを置いたが、メジャーではシンプルにストライクゾーンで勝負する重要さに気付かされた。
メジャーの打者は対戦回数が少ない頃はボール球も振ってくるが、対戦を重ねるほどにボール球を振らなくなる。
誘い球はカウントを悪くし、球数だけが増える悪循環を招く。だが、もうひとつ投球をシンプルにする必要性があった。笑いながら話してくれた。
「アメリカの方がストライクゾーンが広いって聞いていたけど、こっちの方が無茶苦茶ゾーンは狭い(笑)。
日本だと捕手がいいキャッチングしたり、微妙な所もしっかり捕ってくれたらストライクになったけど、こっちではテレビでストライクゾーンが出る様になって、審判もそこを気にして映像で確認しているから、余計に厳しくなった。そういうのもあります(笑)」