JTバレーボール、大躍進の理由BACK NUMBER

JTマーヴェラス「昇格2年目で2位、一歩ずつ成長してきた」

posted2018/05/31 11:00

 
JTマーヴェラス「昇格2年目で2位、一歩ずつ成長してきた」<Number Web> photograph by Tadashi Shirasawa

正セッターとして攻撃を組み立てる田中美咲。吉原監督の厳しい練習で大きく成長した一人だ。

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田中夕子

田中夕子Yuko Tanaka

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Tadashi Shirasawa

昇格2年目で2位のマーヴェラス。JTバレーボール部の躍進の秘密を探る。

 4位から2位。順位だけを見れば「躍進」といってもいいはずなのだが、チームを率いる指揮官、吉原知子の見解は、少し違う。

「よく戦ったな、と選手たちを褒めてあげたい気持ちはあります。でも、もっとやれたよね、という部分もある。躍進というより、まだ成長過程という感じですね」

 あれからまだ、たったの3年。

「指導者は簡単じゃないですよ。難しい。選手の時のほうが、よっぽど楽でした」

 2015年6月1日。吉原と下部リーグにいた選手たちが初めて対面したその日。大げさではなく、体育館の空気はピンと張り詰めた。

 やっぱり怖い人なんだろうか。これからどうなるんだろう。そんな緊張感が漂う中、スッと入って来た吉原の顔を、今でもはっきり覚えている、と振り返るのは3年目のリベロ、小幡真子だ。

「目力がとにかくすごかった。『絶対、プレミアリーグに上がらせるから』っていう目つきで入って来て『私は妥協しないから』って。ともさんの言うことは新鮮で、でも、そうだよね、と思うことばかり。一言、一言がスッと入って来ました」

 言葉だけでなく、練習内容も一変した。まず着手したのは平均身長が高くないチームが、体格や経験で勝る相手と戦えるだけの体と心をつくること。一本で決めようとするのではなく、何本も何本もつないで最後に決めきる体力と、動き続けても切れない集中力と精神力を磨くべく、2分間動きっぱなしのラリーを6セット繰り返す。あまりの苦しさに倒れ込む選手もいたが、それでも練習は終わらない。最後はセッター2人が9mの距離で向き合い、ロングパスを300回。ボールが落ちたら、たとえ10回でも298回でも、もう一度やり直し。

 セッター、田中美咲がこう振り返る。

「体はヘトヘトだけど、すぐ近くで見ているのでごまかせない。正直、ともさんの顔が鬼に見えたこともありました(笑)」

 妥協しない。その言葉をまさに地で行く日々が続く。たとえば6人がコートに入る実戦形式の練習では、サーブレシーブをする選手は必ず指定の位置にボールを返し、なおかつすべてのローテーションで攻撃が決まればOK。言葉にすると簡単そうだが、実際はそううまくいかない。何時間経ってもクリアできず、時計の針だけが進み続ける。まだやるのか、そんな空気が蔓延する中、吉原が発した言葉に心底驚いた、と田中が振り返る。

「『時間が来たら終わると思わないで。できなかったら、布団敷いてここで寝てもらうから』って。嘘でしょって思ったけれど、嘘じゃない。とにかく終わらせよう、もう一回集中して頑張ろうって必死でした」

【次ページ】 吉原監督は練習で厳しさを徹底した。

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