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謙虚で照れ屋な元ブンデス得点王。
マイアーはフランクフルトの神様。
text by
島崎英純Hidezumi Shimazaki
photograph byGetty Images
posted2018/05/19 16:30
長谷部誠のチームメートのアレクサンデル・マイアー。高原直泰とプレーした時期もある。
近年は相次ぐ負傷に悩まされた。
ブルフハーゲン氏は2016年にハンブルガーSVの代表取締役に就任しましたが、今季の不振の責任を問われて3月に解任の憂き目に遭っています。この後のフランクフルトvs.ハンブルガーSVの試合結果を見ると、マイアーとブルフハーゲン氏との数奇な関係性を感じずにはいられませんでした。
近年のマイアーは、相次ぐ負傷に悩まされて戦線離脱を繰り返していました。昨年夏に右足首を負傷して2度の手術。そして昨年11月には右足かかとの痛みを生んでいた骨の除去手術を行なうなどして、これまで約8カ月間も戦列から離れていたのでした。
マイアーがかつてブンデスリーガの得点王だった事実は知っていましたが、こんな経歴の持ち主だったことは初めて知りました。そんなチームを象徴する選手が、今回のハンブルガーSVとの一戦で久方ぶりにベンチ入りを果たしたのですから、そりゃあ、みんな彼の勇姿を見たくてスタジアムへ訪れますよね。でも、このときは僕、まだマイアーの存在を片隅にしか留めていませんでしたけども……。
87分、ピッチに入ると会場がゾワゾワ。
試合はハンブルガーSVの伊藤選手が巧みな動きからゴールゲット! と思ったらVARでオフサイドと判定されて取り消し。すると、その直後にマリウス・ボルフがゴールを奪いフランクフルトが先制します。これで意気消沈したハンブルガーSVは、後半にオマール・マスカレルに追加点を決められて敗戦濃厚となります。
大勢が決まったと思った僕は、酒井選手らのコメントを取ろうと記者席を立って階段をゆっくり下り始めました。スタジアムの経過時間は87分を指しています。
その瞬間、何だかスタジアム全体からゾワゾワとした空気が……。ライン際に長い髪を後ろに縛ったポニーテールの大男が立っています。セバスチャン・アレの交代が告げられ、代わりにピッチに立った選手の名前がコールされると、スタジアム全体がマグマのように沸き立ちました。その熱狂的な空気に、思わず僕もスタンドの踊り場で足を止め、しばしピッチに見入ってしまいました。