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ネイマールがパリで王様になっても、
ロナウジーニョほど愛されない理由。 

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吉田治良

吉田治良Jiro Yoshida

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photograph byGetty Images

posted2018/05/17 11:00

ネイマールがパリで王様になっても、ロナウジーニョほど愛されない理由。<Number Web> photograph by Getty Images

PSGで余裕のタイトル獲得となったネイマール。彼の頭にある未来はパリでのさらなる躍進か、それとも?

メッシという王様がいた不幸。

 ネイマールにとって不幸だったのは、メッシという王様が先に生まれていたことだ。

 この5歳年上のスーパースターが君臨しているかぎり、バルサでは永遠に自分の時代は訪れない。王位を継ぐ資格が十分過ぎるほどあると自覚しながら、忠実な家臣を演じなければならない苦悩は、「メッシを取り上げた」ロナウジーニョにはなかったはずだ。

 昨年の夏、2億2200万ユーロ(約288億円)というビッグマネーでバルサからパリSGに移籍し、ネイマールは望み通り王様になった。しかし、それまでの抑圧された時間の反動か、あるいは目的のためなら手段を選ばない、代理人でもある父に毒されたからだろうか。パリでのネイマールは、傍若無人でエゴイスティックな暴君と化してしまう。

「世界ナンバーワンのプレーヤーになる」

 その想いが、あまりにも強すぎるのかもしれない。チームメイトとPKキッカーを巡って揉めるのも、技巧をひけらかしてマーカーを必要以上に挑発するのも、相手のラフプレーにカッとなって報復行為に走るのも、きっとナンバーワンの証──すなわちバロンドールだ──を手にしたい、その一心からなのだろう。

メッシ、ロナウドを超えたい焦燥感。

 PSGに移籍後のネイマールを突き動かしているものは、ある種の強迫観念に近い。一日でも、いや1分1秒でも早く、メッシを、あるいはクリスティアーノ・ロナウドを超える存在にならなくてはいけない。だから、ちょっとしたことにも神経過敏になって、不満を募らせるのだ。華麗なフェイントや強烈なシュートの向こうに焦燥感がちらついて見えるのは、おそらく気のせいではない。

 一方、ロナウジーニョを突き動かしていたものは、プレーする喜び、ただそれだけだった。

 当時のバルサの監督、フランク・ライカールトはこう話している。

「ロナウジーニョのプレーを見ていると、自然と喜びが湧いてくる。だから、世界中の誰もが彼を好きになるんだ」

 フットボールを楽しめるなら、自分が主役にならなくても構わなかったし、もしかしたら試合の勝敗さえも、彼にとっては二の次だったのかもしれない。

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