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ジェラードがレンジャーズ監督就任。
経営破綻後の名門、どう立て直す? 

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山中忍

山中忍Shinobu Yamanaka

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photograph byGetty Images

posted2018/05/13 11:30

ジェラードがレンジャーズ監督就任。経営破綻後の名門、どう立て直す?<Number Web> photograph by Getty Images

リバプールの絶対的存在として君臨したジェラード。指導者としてのファーストステップはスコットランドを選んだ。

クラブ側はサポートを口約するが。

 前述の通りジェラードはイスタンブールの奇跡で、自らゴールを挙げて大逆転優勝に至る反撃の狼煙を上げたが、9点差が示す戦力のギャップを監督として挽回するなら、それこそ「奇跡」に近い難業だ。

 ちなみにレンジャーズ歴代監督には、やはり8年間リーグ優勝から遠ざかっていた状況で就任した人物がいる。奇しくもジェラードと同じ元リバプールのMF兼キャプテンでもあるグレアム・スーネスだ。

 ただスーネスが選手兼監督として雇われた当時のレンジャーズは、国内のビッグクラブであることに変わりなく、金銭的な体力でもセルティックに対抗できるだけの力を持っていた。それとは対照的に、ジェラードが雇われた現在のレンジャーズは、いまだに破産のダメージを引きずっている。

 クラブはリバプールとのユース監督契約、『BTスポーツ』との解説者契約が切れるジェラードに対し、補強予算提供を口約しているらしい。だがライバルのセルティックはCL参戦による収益増も重なり、レンジャーズの3倍に当たる収益規模だという。今夏の補強を経て、両チーム間の戦力差は縮まるどころか更に広がる可能性がある。

就任会見で「優勝できそう?」の声。

 そもそも、フロントが資金面でどこまでジェラードを援助できるかも怪しい。前任者のグレアム・マーティーは、U-20チーム監督からの内部昇格だったが、セルティック戦での5失点大敗から2日後、就任から半年足らずで冷酷にも首を切られた。今冬の移籍市場でも積極的に動けず、バックアップ不足は他チームの監督から同情を寄せられていたほどだというのに……。

 マーティーは昨年2月にも暫定指揮を任されたが、それはクラブがアバディーンからデレク・マッキンズ引き抜きに失敗したことが理由だった。アバディーンは、レンジャーズの衰退に乗じて国内2番手に浮上してきたチーム。5年前から指揮を執るマッキンズは、グラスゴー出身の元レンジャーズMFだが、彼でさえ斜陽の古巣を率いるリスクから監督就任を断っていたわけだ。

 そしてジェラードが取り組む仕事の難しさと厳しさを、サポーターや地元メディアは重々承知かというと、そうでもない。クラブによれば約7000人のファンが駆けつけた5月4日の就任会見では、「8年ぶりのリーグ優勝を実現できそうか?」との質問が初めてトップチームを率いる新人監督に飛んでいる。

 レンジャーズの監督とは、そういうものなのだ。

【次ページ】 ジェラードは「望むところだ」。

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スティーブン・ジェラード
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