テニスPRESSBACK NUMBER

データで見えた錦織圭の完全復活!
鬼の勝負強さでマスターズ準優勝。 

text by

今田望未

今田望未Nozomi Imada

PROFILE

photograph byGetty Images

posted2018/05/07 16:30

データで見えた錦織圭の完全復活!鬼の勝負強さでマスターズ準優勝。<Number Web> photograph by Getty Images

モンテカルロで躍動感あふれるプレーを見せた錦織圭。全仏オープンに向けても期待が高まる。

クレーで必須のフォアハンドが向上。

 錦織の長期離脱の原因となったのは手首のけがで、それ以前からフォアハンドの威力の低下が指摘されていた。また、復帰後もフォアハンドの不調が続き、ラリーが長く続くクレーコートのテニスでは、このフォアの向上は重要課題と思われた。

 ハードコートシーズンの試合では、すべてのポイントのうちフォアハンドの簡単なミス(アンフォーストエラー)の割合は、2試合とも13%台。しかし、クレーシーズンに入り、データがあるモンテカルロの6試合では、最も多かったセッピ戦でも10.8%、最も少なかったチリッチ戦ではなんと6.4%に減少した。

 こう聞くと、単にミスを減らすような意識が働いたからではないか、という疑問も生じるだろう。しかしそんなことはない。獲得したポイントのうちフォアハンドで決めたポイント(ウィナー)は、ハードコートシーズンで5.6%だったが、クレーコートでは5.4%とほぼ変わらない。

 クレーコートは球足が遅く、簡単に決まらないサーフェスだ。そう考えると、ミスが減り、自分で決めるポイントが減らないということは、決してミスを恐れた弱気のプレーをしていたわけではないことがはっきりと分かる。そして、フォアハンドが改善し、決定力も戻ってきたことが今回の躍進に繋がっていると推定できるのではないか。

気になるのはサービスゲームの長さ。

 では、悲願のマスターズ初優勝、そして全仏オープン優勝に向けて何が必要か。そこで一つ気になるデータが上がってきた。それは、サービスゲームの長さだ。

 サービスゲーム1ゲームあたりにかかったポイント数を見ると、今年の錦織のツアーレベルでの敗戦5試合のうち、自分のサービスゲームの方が少ない試合はわずか1試合だった。一方勝った9試合では、自分のサービスゲームの方が少ない試合が7試合もあった。つまり、サービスゲームにかかるポイント、時間が短くなると勝率が上がるというものだ。

 ビッグサーブを持たない錦織にとって楽にサービスキープすることは、試合時間を短くさせて体力を温存させ、リターンゲームに集中できるという効果に表れるはず。

 そこで今後、錦織のサービスゲームの組み立て、展開に注目すると面白いのではないだろうか。2週連続で開催されるマドリード、ローマの各マスターズでの活躍から目が離せない。

BACK 1 2 3
錦織圭
マリン・チリッチ
アレキサンダー・ズベレフ

テニスの前後の記事

ページトップ