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五輪金メダルは最上位目標ではない!?
「突け、心を」を説くフェンシング協会。 

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太田雄貴

太田雄貴Yuki Ota

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posted2018/05/07 07:00

五輪金メダルは最上位目標ではない!?「突け、心を」を説くフェンシング協会。<Number Web> photograph by Sports Graphic Number

協会のスローガンである「突け、心を」のポストカード。裏にはJALのNEXT ATHLETE MILE制度の案内も。

「社会的存在」になるという意味とは?

 社会的存在になること、それはすなわち、このスポーツを通じて社会に貢献すると同時に、社会の構成員である個人、企業などさまざまな団体にその価値を認めてもらう、ということです。

 より具体的にいえば、私たちが掲げる理念に企業や団体の方が共感してくださって、そういった団体と共通の目標、共通の利益を目指して一緒に何かを作っていける存在になること。いわゆる企業のスポンサーシップも、「フェンシングスーツの胸の部分に企業ロゴを出すといくら」といった話があったとしても、その原点にはこのような価値観の共有があってしかるべきです。

 また、逆に何か問題が起きたとき、進むべきか退くべきか重大な判断をしなければならない場面が訪れたときに、理念にそぐわないこととは距離を置く、といった判断もできるようになる。

 しっかりとした価値基準、その形を、できるだけ早く、しかし付け焼き刃的なものでなく、議論を重ねながら「こういう競技団体であるべき」「こんな競技団体なら応援したいよね」といった視点も加味しつつ、最上位となる概念から丁寧に作っていきました。

分かりやすく提示できる理念が無かった。

 ひと言付記しておくと、これまでの協会運営がいけなかった、悪かったということでは決してありません。

 これまでの取り組みに理念がなかった、というわけでもありません。

 必要に迫られた、というのが一番正しい表現かと思います。より多くの人にフェンシングを見ていただきたい、応援していただきたい、そう考えたときに、分かりやすく提示できる理念がなかったことで、苦しい局面に立たされることがあったように思うのです。

【次ページ】 「五輪金メダル」を最上位目標に掲げない。

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太田雄貴

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