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起用法を巡る騒動は世界でも日常的。
騒動の主役がハリル、なのが寂しい。 

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吉田治良

吉田治良Jiro Yoshida

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posted2018/05/02 11:30

起用法を巡る騒動は世界でも日常的。騒動の主役がハリル、なのが寂しい。<Number Web> photograph by Getty Images

かつて所属したユベントスのジダンとマッチアップするR・バッジョ。指揮官との確執は常に報じられるところだった。

モウリーニョもセスク、ポグバと不仲説。

 そんなイブラが師と仰ぐのが、インテル時代にともに数々の栄光を掴んだジョゼ・モウリーニョだ。しかし、この癖の強い“スペシャルワン”には敵も少なくない。2015-16シーズン途中には、成績不振を理由にチェルシーの監督を解任されたが、背景にはエデン・アザールやセスク・ファブレガスなど主力選手との対立があると、もっぱらの噂だった。

 モウリーニョは現在指揮を執るマンチェスター・ユナイテッドでも、起用法を巡ってポール・ポグバとの不仲説が報じられているが、いつか、どちらかが出て行くことになるのかもしれない。

 選手を取るか、監督を取るかの判断には、もちろんチームの成績が影響する。不満分子を手なずけられないうえに、なおかつ試合内容が悪く、結果が出ないのであれば、クラブ首脳陣は高給取りの指揮官のクビを切ることを躊躇わない。

プレーの質で黙らせる選手はいたか?

 だから、ハリルホジッチも切った。

 そう説明してくれれば、すっと腑に落ちただろう。国民もメディアも、そして、こうしたサッカー界の厳しさを熟知しているはずのハリルホジッチ前監督自身も、だ。

 同じくロシアW杯に出場するセルビア代表では、予選の首位通過を決めた直後にスラボリュブ・ムスリン監督が突如解任されているが、その理由は明快だった。

「予選終盤戦の内容の悪さと、一部若手選手との確執」である。「一部若手選手」とは、いまやヨーロッパ屈指の攻撃的MFに成長を遂げた、ラツィオのセルゲイ・ミリンコビッチ・サビッチと言われている。この23歳のビッグタレントを、なぜかムスリン監督は冷遇し、多くの国民がその扱いに憤っていた。

 ハリルジャパンの末期にあって残念だったのは、少々雄弁に過ぎるこの指揮官を、プレーで黙らせるような選手がほとんど見当たらなかったことだ。万人が支持するほど際立つパフォーマンスを見せていた選手が、いったいどれだけいただろうか。

【次ページ】 監督に煙たがれた天才バッジョ。

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