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協会、ハリル、そして選手たち。
解任劇には三者三様の責任がある。 

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寺野典子

寺野典子Noriko Terano

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posted2018/04/25 07:00

協会、ハリル、そして選手たち。解任劇には三者三様の責任がある。<Number Web> photograph by Getty Images

ハリルホジッチ氏の記者会見で何が語られるのか。日本のサッカー界がその日を戦々恐々と待っている。

日本になかったものを植えつける意欲。

 とはいえ、とはいえだ。

 日本人の身体能力(強さや高さ、スピード)が、外国人選手を上回るわけではない。1対1での勝負にそうそう勝てるわけでもない。

 ならば、いかに優位な状況で1対1に持ち込むか、1人がかわされた時にどうカバーリングするか。味方との速いパス回しも必要だ。どこをとっても「組織力」が求められるだろう。

 そして縦に速いサッカーの中では、ボールを奪ったあとの形の作り方が最重要事項となる。3月時点では1トップの大迫勇也に収めてサイドで崩す形はあったが、攻撃のバリエーションは少なかった。その少なさは、過去のW杯でも、大きな課題だった。

 ハリルホジッチ氏は、1トップの選手が動くことを嫌ったと言われているが、そもそも世界のDF相手に大迫が1人でボールを収めきれるのだろうか。そしてサイドの選手は、まさに1対1での勝負に勝てるのだろうか。

 ハリルホジッチ氏のサッカーは、現在の日本人選手たちの特徴が活きるサッカーではない、という論調もある。これまでの日本代表になかったものを植えつけようとしたのだから、それは当然のことだ。その点で、ハリルホジッチ氏は意欲的だった。

選手を動かせなければ始まらない。

 過去の代表監督とはアプローチも違った。

 これまで多くの監督が「クラブで見せているプレーを代表でも」という方針だったのに対し、「代表では代表のプレーを」と選手に要求した。

 欧米やアフリカでの経験がある監督は、日本人選手の特性を掴むのに時間がかかる。当初は厳しい規律を持ち込むが、日本人の指示に縛られ過ぎる傾向を知る。試合中に大声で指示を繰り返すと、自分で考えることを放棄してしまう、というのも残念ながら事実だ。

 そうやって自分が抱える選手たちの特性を徐々に見極めて、管理の方法を変える。それが監督としてのマネージメント力であり、掌握術だ。

 しかしハリルホジッチ氏は、その弱さを認めなかった。さらに厳しく自身の戦術を徹底させようと、「なぜ戦えない」、「なぜ負けてしまうのか」と鼓舞した。

 どんなに素晴らしい戦術家だとしても、どんなに高名な指揮官だとしても、ピッチに立つ選手たちを「動かす」ことができなければ、結果はついてこない。この点で、ハリルホジッチ氏の評価が下がるのはやむをえないことだ。

 結果を残す監督は、選手たちとの絆も太い。選手の性格を把握し、アメとムチを使い分け、信頼関係の構築に気を配る。信頼は、戦術分析以上に重要だからだ。

 選手が監督との絆を感じていれば、起用法に不満があってもリスペクトが生まれるケースは少なくない。

 その点で、ハリルホジッチ氏は、日本代表監督として力不足だった。

【次ページ】 「問題はなかった」というが。

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