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ハンドボール代表に世界一の監督が。
シグルドソンという男の履歴書。 

text by

石井宏美

石井宏美Hiromi Ishii

PROFILE

photograph byCedric Diradourian

posted2018/04/23 08:00

ハンドボール代表に世界一の監督が。シグルドソンという男の履歴書。<Number Web> photograph by Cedric Diradourian

シグルドソンが最も大切にしているのは「選手個々、チームを向上させること」だ。

「サイドライン」システムを導入。

 目指すスタイルは、「速くてモダンなハンドボール」。監督就任後、まず最初に行った改革はフィロソフィー(哲学)とシステムの構築、そして日本代表に最もフィットする戦術の見極めだった。これは現在もなお継続中だが、「私が持つフィロソフィーと日本人選手のフィロソフィーを融合させて、新しいもの、ベストのものを作っていきたい」と考えている。

 また、選手ばかりではなく、選手たちを指導する日本人コーチの成長を促すことも、日本ハンドボール界の発展にとって、重要な要素だと考えている。

 実は日本代表監督就任と同時に、ハンドボールの本場である欧州リーグの各クラブではすでに採用されている「サイドライン」というシステムを導入した。20年以上前に開発されたシステムだが、自らも欧州のクラブや代表の監督を務めていた頃から使用している。

 ウェブを経由して試合や対戦相手の細かな分析はもちろん、練習内容、各選手の栄養状態などの情報が随時更新され、確認することができるシステムで、日本リーグ各チームの監督やコーチングスタッフとも共有が可能だ。

「フィロソフィーの共有や、代表チームが今、何をしているのかを各クラブの監督、スタッフに知っていただくことは大切なことだと思っています。また、外国人指導者である私がどんなことを行っているかを知っていただくことで、日本人指導者の方々が、欧州の指導者に近づく一つの手助けになるのではないかと考えています」

初陣では宮崎大輔から18歳新鋭を招集。

 初陣となった昨年7月の日韓定期戦では、36歳の宮崎大輔(大崎電気)から、18歳の部井久(べいぐ)アダム勇樹(博多高)まで多彩な顔ぶれが揃った。開始から一進一退の攻防が続いたが、強豪・韓国に対して一歩も引かない戦いを繰り広げた。結果は28-28。勝利こそ逃したものの、過去55戦で13勝2分40敗のライバルに、価値ある引き分け。上々の船出となった。

 チームを率いて1年弱。シグルドソンは日本代表や選手たちに、どれほどの可能性を感じているのだろうか。

「欧州のチームと比べると日本は国内での試合数が少ないので、代表の活動にたくさん時間をかけることができるのは、強化を考えるとプラスのポイント。また、『成功したい』というハングリーな気持ちが強い選手が多いのも評価できる部分です」

【次ページ】 少しアグレッシブさに欠けているのかな。

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