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サッカーも野球も指揮官は大変。
カープ緒方監督が気を付けていること。 

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前原淳

前原淳Jun Maehara

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photograph byKyodo News

posted2018/04/14 09:00

サッカーも野球も指揮官は大変。カープ緒方監督が気を付けていること。<Number Web> photograph by Kyodo News

就任3年目の昨季はリーグ連覇を果たしたものの、CSでDeNAに敗れた。今季こそ日本一を目指す。

外国人も日本人も育てるために使う。

 今だけを見て戦っているのではない。広島一筋の指揮官は広島の未来も見ながらチームづくりを進めてきた。たとえば今や貴重な戦力となっているアレハンドロ・メヒアやサビエル・バティスタのドミニカアカデミー出身の2選手を、育成選手だった昨年春からオープン戦に積極起用した。

 チーム作りが本格化する時期にも、背番号3桁の外国人がスターティングメンバーに並ぶ。そのことに他球団のスコアラーは疑問を抱いていたが、そこにも明確な狙いがあった。

「外国人として見ていない。日本人選手と一緒。育てるために使っている。今季は無理でも、必ず将来チームの力になる」

 2人の成長は指揮官の期待を上回り、同年ともに支配下登録され、バティスタは連覇に貢献。メヒアは今季開幕を一軍で迎えた。投資は間違いなく、実を結んだ。

 緒方監督は外国人選手とコミュニケーションをとるため、春季キャンプ中に彼らを食事に誘う。今年のオープン戦終盤の福岡遠征では、OBが営む焼肉店でともに舌鼓を打った。

「家族的なところを感じる」(エルドレッド)

 外国人に日本化を求めるだけではない。日本人選手は片言であっても英語やスペイン語を使ってコミュニケーションを図る。ドミニカアカデミー出身の投手が3人いる二軍のブルペンでは、指導するコーチ、球を受ける日本人のブルペン捕手までスペイン語を使っている。

 来日7年目のエルドレッドも「この球団には家族的なところを感じる。大きな会社ではなく、家族で経営している雰囲気がチームの中にも出ている。すべてがこぢんまりとしていて、1人1人とのつながりを感じる」と語る。信頼関係は一方通行では築けない。互いに向き合い、歩み寄ることで「絆」は生まれる。

 日本サッカー協会は「オールジャパン」を旗印に挙げているが、広島には「オールジャパン」ではなく「オールカープ」の精神が宿っている。

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緒方孝市
広島東洋カープ

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