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雪で試合中止。そこで発揮された
イチローの絶妙なリスク回避力。 

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笹田幸嗣

笹田幸嗣Koji Sasada

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posted2018/04/15 11:30

雪で試合中止。そこで発揮されたイチローの絶妙なリスク回避力。<Number Web> photograph by Getty Images

4月7日、厳しい寒さの中行われた試合、イチローは守備中、何度も息で手を温めていた。

2時間40分ほどの「自分の時間」。

 イチローは試合中止の報を聞き、まずは球場へ向かい、自身のロッカールームを片付けた。その後宿舎の自室へと、とんぼ返り。そうすることで、チームバスに従って動いていたら得られなかった2時間40分ほどの「自分の時間」を手に入れたのだ。

 イチローは、この突然に生まれた時間を、最大限活用したようだ。リラックスタイムを存分に楽しんだのかもしれないし、バットを宿舎へ持ち込むことも多いイチローなら、入念な素振りを繰り返したかもしれない。

 有意義な時間を過ごしたイチローは、チームの集合時間にその場所へ向かった。

 イチローを取材していると感じることがある。

 多くの選手には答えを導き出すためにその過程が大事となるが、イチローには過程は存在しないことが多い。最初から明確に答えが見えている。そして、その答えに端的にたどり着く能力を持っている。

 今回の件には更にオチもついた。球場から空港への出発は14:00のはずが15:00となってしまったのだ。想定外のディレイに、イチローでさえ1時間以上の時間を持て余すことになったが、大半の選手は2時間半もクラブハウスで待ちぼうけとなった。

 予定通りに進まないのが米国での日常生活。

 百戦錬磨のイチローには、リスク回避能力も自然と高まっているようだ。
 

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