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大谷翔平の二刀流を支える
アシックスの純国産技術。 

text by

河崎三行

河崎三行Sangyo Kawasaki

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photograph byAFLO

posted2018/04/13 16:30

大谷翔平の二刀流を支えるアシックスの純国産技術。<Number Web> photograph by AFLO

大谷のみならず、高校球児のために。

大谷選手モデルのスパイクづくりに携わったアシックスの河本氏(左)と林氏(右)

 逆にアシックスの側からは、大谷に対してこんな提案がなされたという。

「日本の投手の多くは、地面とこすれたりして負担がかかる軸足側のスパイクのつま先に、P革と呼ばれる補強パーツを後付けしています。従来の大谷選手モデル(投手時)にも、P革と同じ機能を持たせた補強革が付けられていました。しかしP革があるとアッパー本来の柔軟性が失われたり、わずかですが左右で重さの違いも生じます。しかも大谷選手は二刀流ですから、打撃時は野手用に履き替えなければいけない煩わしさもあり、できれば一種類のスパイクで通したいと考えていました。そこで彼に、『P革不要のスパイクにしましょう』と伝えたんです」(河本氏)

 それはまた大谷のみならず、日本中の高校球児たちのための改良でもあった。

「P革は消耗品です。職業としてプレーしているプロの投手は、つま先がすり減ったらスパイクごと新調しますが、アマチュアはP革を取り替えながら、大事にスパイクを履き続けるもの。しかしその交換には、費用も時間もかかります」(河本氏)

 一方、大谷モデルのように前足部にまでミッドソールがあるスパイクは構造上、P革を後付けできない。最近は大柄な球児も増え、彼らの体を守るためにはクッション性に優れた、フルミッドソールのタイプを履くべきなのだが、P革のためそうしたスパイクを断念する選手も少なくない。

「全然削れてない。すごいですね」

 開発陣は、この難題にも応えて見せた。

「アシックスのテニスシューズに使用されている、メッシュ生地にポリウレタン樹脂を含浸させた素材をアッパーに採用しました。強度と軽さと屈曲性を兼ね備えているので、P革は必要ありません」(林氏)

 アスファルトのようなテニスのハードコートで酷使されることを前提としたアッパー素材だから、土の野球グラウンドぐらいではびくともしない。

「大谷選手も最初は半信半疑だったんですが、エンゼルスのオープン戦で数試合使用した後、『全然削れてないです。すごいですね』と、渡米していた当社のスタッフに伝えてくれました」(河本氏)

【次ページ】 大谷が見せた飛びっきりの笑顔。

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