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「全員野球」が本当に理想なのか。
英明・香川監督が貫く「9人野球」。

posted2018/03/23 17:40

 
「全員野球」が本当に理想なのか。英明・香川監督が貫く「9人野球」。<Number Web> photograph by Kyodo News

「9人野球」という英明の珍しいスタイルは、あくまでも勝利のためなのだ。

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中村計

中村計Kei Nakamura

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 貫いた、というよりも、貫かざるを得なかった。

「9人野球」が代名詞の英明(香川)は、センバツ初日のこの日、国学院栃木に2-3で惜敗。案の定、最後まで選手交代は一度も行わなかった。

 監督の香川智彦は、諦観交じりに言った。

「9人で勝ってきたチームですから」

 英明は昨秋、香川を制し、四国大会でも準優勝したチームだが、公式戦全8試合で、投手を含めてレギュラー9人以外が出場したのは、天満龍弥が代打で1打席立ち、その後レフトの守備についたとき、たった一度しかない。

 この試合では、天満に代わって代打の一番手に昇格した横岡伶が、下位打線に回ってくるたびに、ヘルメットをかぶり、バットを持って監督に「準備OK」をアピールしたが、最後まで声はかからなかった。

 控えめな口調で横岡が振り返る。

「部長とか、他の選手に言われて、4、5回準備をしたんですけども……」

「勝つことを考えたら、全員野球は……」

 出場校中、もっとも部員が少ないのは智弁和歌山で22人。英明は、それに次ぐ少なさで23人だった。ただ、香川はこう嘆く。

「向こうは選りすぐりの22人でしょう。うちは、中学時代、軟式野球の補欠だった子も2、3人入ってますから。レベルがぜんぜん違います」

 少しでもうまい選手を徹底的に鍛えようと、昨年の夏休みは49試合練習試合を組み、投手以外はほぼ出ずっぱりだったという。練習もあくまでレギュラー中心だ。

 香川が話す。

「まったく力がないのに練習させても仕方ない。よく『全員野球』って言いますけど、勝つことを考えたら、あれは僕はあんまり……。公平とか平等っていいますけど、うまい選手を優先的に鍛えた方が、結果的に下手な選手にとってもいいんですよ。こうして、甲子園に出られたわけですから。試合には出られなくても、甲子園の土を踏めたんですから」

【次ページ】 チャンスは与える、しかし力の差も事実。

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