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30周年の東京ドームに燦然と輝く、
松井秀喜と大谷翔平だけの勲章とは? 

text by

鷲田康

鷲田康Yasushi Washida

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photograph byHideki Sugiyama

posted2018/03/18 09:00

30周年の東京ドームに燦然と輝く、松井秀喜と大谷翔平だけの勲章とは?<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

完成前の東京ドームを見て、長嶋茂雄は「天井にボールをぶつけることは無理だろう」とコメントしていたという。

誰も知らなかった、東京ドームの真実。

 東京ドームの天井はご存知のようにフッ素樹脂コーティングしたガラス繊維の白い幕で覆われている。打球が打ち上がると、その幕の白色とボールが同化して、打球が見えにくくなる。開場前に盛んに言われていた話だった。

 この他にも密閉したエアドームという構造のために、応援の声援や掛け声、トランペットなどの音が反響して選手同士の声が聞きにくくなり連係に支障をきたすのではないか、など様々なウワサが流れていた。

 本当の答えは誰も知らなかった。

 ただ、こうしたウワサに星野監督が文句を言ったというのが原稿のテーマだった。

 前日に何人かの担当記者と雑談をしていたときに、監督がこんなことを言い出したのだ。

「開場する前からボールが見えない、騒音がうるさいなんていうのはおかしいやろ。なぜ作るときにそれなりの対応策を練らんのか」

「ドームは公平の原則に反する!」

 当時はこの新球場には結局は慣れるしか手はないと言われていた。だとすると本拠地で数多く試合をする巨人が有利になるという論理だったのだ。

「ドームは公平の原則に反する! そういう球場は作るときにちゃんとするべきなんや」

 まさに東京ドームを本拠地にする巨人の責任ということだ。

 この星野さんの発言に飛びついて、原稿にした。報知新聞だからご丁寧にも当時の巨人・王貞治監督から「どのチームだって初のドームに不安はあるよ」と呆れたようなコメントまで引き出して紙面化した。

 その王さんのコメントを見て、さらに怒り心頭となったというわけだ。

 結局、大越部長の配慮も虚しく、球場で顔を合わせると星野監督の怒りはまったく収まってはいなかった。

「オイ、いつワシが吠えたんや? ワシは犬、ちゃうぞ!!」

 こう吐き捨てるように言われて、それから数日後に米フロリダ州のベロビーチキャンプに出発する成田空港のトイレで「個人的にそばに寄るな」と公式会見以外の“取材拒否”を通告されたのである。

【次ページ】 本当に……東京ドームでボールが消えた!!

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