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「眼鏡先輩」も人気の秘密は訛り?
韓国カーリングブームの実態を探る。 

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吉崎エイジーニョ

吉崎エイジーニョ“Eijinho”Yoshizaki

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photograph byGetty Images

posted2018/03/08 11:00

「眼鏡先輩」も人気の秘密は訛り?韓国カーリングブームの実態を探る。<Number Web> photograph by Getty Images

日本のスキップ藤澤五月が、メガネを外すときれいだと絶賛したという報道も出る人気ぶり。

五輪の舞台で昔からの友達の名を叫ぶ。

 冒頭部分は「チーム・キム」の5人全員に贈られた同一内容でもある。

「田舎道」とは、彼女の郷里・慶尚北道の義城郡を指す。人口約5万6000人の小さな町。ここで高校時代、娯楽が少なく、放課後が暇だったという理由でカーリングを始めた。きっかけは1年時('06年)の体育の授業でやってみたことだったという。

「眼鏡先輩」はこの時、友人であり後に「チーム・キム」で共に銀メダルを獲得するキム・ヨンミを誘った。ヨンミが妹のギョンエを誘い、さらにギョンエが友達のキム・ソニョンを誘った。'15年、そこにソウル近郊で期待の新人として知られたキム・チョヒが加わり、現在の形のチーム・キムがスタートした。

 韓国では、「眼鏡先輩」とともに、彼女が試合中に叫ぶ「ヨンミー」のフレーズも大流行している。五輪の舞台で昔からの友達の名を叫ぶ。しかも「ヨンミ!」の語調の違いで様々な意思疎通が出来る。ヨンミ本人のおばあちゃんがつけたというちょっと古くさい名前。じつは「ヨンミ」は「眼鏡先輩」のお母さんと同姓同名(みんなキム)。

 そういった姿が感動を呼んだ。大会1年前からの競技協会の管理問題をめぐる内紛の影響で国際試合にほとんど出場できなかった点も、結果的にはこのドラマのエッセンスになった。

首都を介さずに世界と戦う姿。

 日本でも「チーム藤澤」以前から、女子カーリングについては「地方都市から世界の大舞台へ」「フツーっぽい女子が五輪で活躍」という点が人気の要因に含まれてきたが、「眼鏡先輩」も同様なのだ。

 首都ソウルの人口比率は徐々に減ってきているものの、今も20%近い(東京は約10%)。そこで首都を介さず見せつけた世界と互角に戦う姿は、大きなインパクトがあった。

 大統領からの感謝状には、メンバー同一の内容のほかに、「眼鏡先輩」個人に向けてこんな言葉も綴られている。

「毎試合真摯に臨んだキム・ウンジョン選手に全国民が心を奪われました。キム選手が「(試合中にチームメイトの)ヨンミ」と(名を)叫ぶたび、(国民も)心をひとつにして叫びました。キム選手の望みどおり、我々すべてがカーリングの魅力にはまっています」

【次ページ】 試合中の厳しい表情と、試合後の微笑み。

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