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ローマ、ミランにトルコ人が君臨!
進撃のウンデルとチャルハノール。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byGetty Images
posted2018/03/06 16:30
世代別代表を経験してきたウンデルは'16年11月にA代表デビューも果たしている。佳境を迎えるCLでも台風の目になれるか。
大外れのウチャンを思い出す低調さ。
昨夏、バシャクシェヒル(トルコ)から永遠の都へやってきたウンデルは、異国への順応に苦しんだ。
イタリア語がわからなくて、練習メニューが理解できない。猛者揃いのチームメイトたちに“1周遅れ”でついていくのがやっとだった。
日本でいえば高卒2年目の若手が、昨季の攻撃の中心だったFWサラー(現リバプール)の後釜として移籍金15億円以上を支払われて獲得されたのだ。プレッシャーを感じないはずがない。前半戦11試合に出たが得点の気配すらなかった。
ロマニスタたちは「どうやらウチャンと同類か」と嘆き始めた。
もうほとんどの読者の記憶から抜け落ちていると思うが、MFウチャン(現シオン)はトルコ代表として'14年夏にフェネルバフチェから鳴り物入りでローマに入団。しかし在籍2年で出場7試合0得点に終わり、ロマニスタには“近年稀に見る移籍市場の失敗例”扱いされている。
指揮官はウンデルの才能を信じ続けた。
だが、指揮官ディフランチェスコはウンデルのイタリア語習得を見守りながら、辛抱強くトップチームで使い続けた。
「『ユース選手を引き上げて使った方がいい』という外野の声もあるが、彼には才能があり、個別指導をする価値があると思った。口を酸っぱくして、仕掛けるタイミングやポジショニングを教えこんできたつもりだ」
チームの低調と中盤の故障者続出を受け、戦術を4-2-3-1へスイッチした23節ベローナ戦に先発したウンデルは、試合開始43秒で先制点を奪い、これが結果的に決勝ゴールとなり、ついに壁を破った。クラブ史上初のトルコ人選手によるゴールは、6試合勝ちに見放されていたチームへ再び火をつける一撃だった。
続くベネベント戦で2得点と大暴れした際、ウンデルは軍隊式の敬礼ポーズで物議を醸した。