メドベデワは、競技に限らないお手本に。

　たとえば、会見場での「このペットボトルの水って飲んでいいの？」「もちろんいいに決まってるじゃない（笑）」といった何気ない会話。インタビューや会見で質問の受け答えに窮したときメドベデワが助け舟を出すこともあった。記者からのどんな質問にもできる限り答えるメドベデワは、ザギトワにとって氷の上以外でもお手本のような存在になっている。

　そのほかにも、「うん、これでよし」とザギトワのジャージの衿をメドベデワが直してあげるなど、身だしなみを整える場面もよく見られた。リンク練習でザギトワのプログラム『ドン・キホーテ』の出だしをメドベデワが真似して滑ってみせ、笑い合って場を和ませるといったこともあった。

　18歳と15歳の2人が見せる仲むつまじい姿はまるで姉妹のようだった。

怪我も敗北も乗り越えた、毅然とした言動。

　メドベデワにしてみれば、先輩としてそうした行動を取ることによって気を落ち着かせている部分もあるかもしれない。

　しかし、怪我で欠場した昨年12月のGPファイナル、そしてロシア選手権と次々にザギトワが勝利していき、ついには今年1月の欧州選手権で自身を下しての優勝。いよいよ自分を脅かす存在となった後輩に対して、なかなかそう簡単に取れる行動や態度ではない。

　そして、メドベデワが出した世界記録をわずか20分後にザギトワが塗り替えた、女子シングル・ショートプログラム後の記者会見。英語が話せないザギトワにメドベデワが通訳を買って出たことをタチアナ・タラソワは激賞した。

「あんな素敵な光景を私はこれまで見たことがないわ。つまりジェーニャは人間的にもすぐれた天才ということなのよ」

　今季は技術的にはザギトワが、人間的にはメドベデワが大きく成長したシーズンと言えるかもしれない。

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