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マンC相手に連続完敗のアーセナル。
また解任の声、ベンゲル22年目の冬。 

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山中忍

山中忍Shinobu Yamanaka

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posted2018/03/04 07:00

マンC相手に連続完敗のアーセナル。また解任の声、ベンゲル22年目の冬。<Number Web> photograph by Getty Images

グアルディオラ(右)の攻撃サッカーの前になすすべもなかったベンゲル監督。逆襲の機会は来るのか。

ウィルシャーも中軸になりきれぬまま。

 ベンゲルは、名監督かつ若手を登用する指導者として評価されてきた。だがここ10年は、逸材を使って育てる手腕に陰りが見られる。例えばサウサンプトンから引き抜いた、セオ・ウォルコットとアレックス・オクスレイド・チェンバレン。前者はストライカーとウィンガー、後者はウィンガーとセンターハーフどちらでも中途半端で、それぞれエバートンとリバプールに新天地を求めた。

 前述したウィルシャーは、9歳からユースで育った。トップ昇格当時にはセスク・ファブレガス(現チェルシー)の後継者と目されたが、度重なる怪我もあって中軸になりきれないまま26歳になっている。

 それとは対照的なのがチェンバレンだ。リバプールのユルゲン・クロップ監督に3センターの一角で起用されている。これはチェンバレン自身も望んだポジションで、トップ4争いに貢献している。そんな状況もあって、ウィルシャーの成長を願うイングランド人記者の間では、ベンゲルの下からの脱出を促す意見もある。

名将ペップですら無冠に終わる厳しさ。

 この逆風にあって、ベンゲルが自ら身を引く可能性はあるのだろうか。「クラブに雇われている身」だとしてフロントに一任しているものの、「愛情を注ぐクラブでの契約期間まっとう」を口にし続けている。ただベンゲルへの信頼が厚いとされるアメリカ人オーナー、スタン・クロエンケは、リーグカップ決勝の会場にもいなかった。

 スチュアート・ピアース(元シティなど)のように、「身を引く時期を自分で決める資格がある」として、来季までの続投を支持する識者もいるにはいる。だがそれは少数派。リーグカップ決勝では試合終了まで20分以上を残して、男性ファンが「もう、うんざりだ!」と叫びながら1階席出口へと向かって行った。

 実際、他のプレミア強豪であれば数年前に首を切られていただろう。例えばペップ・グアルディオラだ。リーグカップ決勝後、シティの監督として初タイトルを手にしたが、就任1年目の昨季は無冠。それでも全面支援してくれた経営陣への「恩」を口にするほど、プレミアの監督事情は厳しい。

【次ページ】 雪のロンドンで諦め調のブーイング。

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