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イラクのサッカー界は復活したか?
“負けたら拷問”時代からの復興。 

text by

クエンタン・ミュレール

クエンタン・ミュレールQueentin Muller

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photograph bySebastian Castelier

posted2018/03/01 17:00

イラクのサッカー界は復活したか?“負けたら拷問”時代からの復興。<Number Web> photograph by Sebastian Castelier

フセイン家の支配下で投獄され、拷問されたシャラル・ハイダルは、イラクサッカー界の復活に取り組んでいるが……。

サッカーだけが宗教による内戦を忘れさせる。

 シャラル・ハイダル(前出のイラクサッカー協会副会長)は、サッカーが人々の絆を再構築する有効な手段であることをよく理解している。

「内戦で蔓延ったセクト主義は、スポーツの領域では受け入れられなかった。動乱の時期も私たちは、試合やスポーツイベント開催のために協力しあった。

 サドル・シティ(バグダッド市内の危険な区域)にも行ったし他の都市にも行った。どこも物騒だったがそれでもうまくいった。

 サッカーだけが宗教による内戦を忘れさせ、イラク国民をひとつにできる唯一の手段だ」

 時代の新たなページをめくるために、イラクサッカー協会は来シーズンからモソール、ラマディ、ディヤラ、サダディンの4チームを、リーグに加えることを宣言している。いずれもテロリストのイデオロギーが、住民の中に深く浸透した都市である。

「本当は今季から実現できたのに、AFCがクラブにライセンスを発行しなかった。スタジアムがまだ使えず、他の施設も不十分というのが理由だった」

突然、テロリストの恐怖が蘇ることも。

 スポーツ省とハイダル・アルアバディ首相もこの提案を歓迎した。

 それは長年の戦いで心身ともに疲弊したシャラル・ハイダルが、最近手がけた中では一番大きなプロジェクトでもあった。

「イラクで何かをしようと思ったら、現実に対応しなければならない。5年後、10年後に向けてのプランは考えられない。

 ある朝、目覚めると、4つの都市がテロリストたちの手に落ち、独立を求める住民投票を実施しているかも知れないのだから……」

【次ページ】 新時代の悩みは、サッカーを巡る「不正」。

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