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新球種は投手にとって諸刃の剣だ。
DeNA今永&山崎、中日大野らの明暗。 

text by

氏原英明

氏原英明Hideaki Ujihara

PROFILE

photograph byHiroaki Yamaguchi

posted2018/02/28 17:00

新球種は投手にとって諸刃の剣だ。DeNA今永&山崎、中日大野らの明暗。<Number Web> photograph by Hiroaki Yamaguchi

昨シーズンは調子を崩して本来の力を発揮できなかった中日の大野雄大。新しい球種にはリスクもあるのだ。

中日の柳はチェンジアップで何を得る?

 中日の2年目の柳は昨季、新人王候補と騒がれながら、ケガの影響で1勝に終わった。

 ただ11試合の登板機会の中で、収穫と課題を見つけたのも間違いなかった。その課題の1つが、球種の少なさだ。

 柳は言う。

「僕の球種はストレートとカットとカーブだけだったんですけど、それだけだと長いイニングを投げられないと感じたんです。4回くらいから打者は合わせてきますし、そうなると本当に投げる球がなくなってくるので、チェンジアップを投げることにしました。

 1つサインが増えるだけでも違うのかなと思います。チェンジアップを投げる上で注意することは、腕の振りが緩くなることですかね。自分の持ち味はコントロール、そこはブレずにやっていきたい」

 大切なのは、「楽をする」という方向に向かわないことだ。

 シーズンが始まる前の登板では「チャレンジ」でも、結果が必要な試合になって、例えば「球数を減らしたい」という狙いが悪い方に働くと、ピッチングを崩してしまう可能性はある。

新しい球種の成否の判断には時間が必要。

 そうならないためには、ピッチングコーチがキーパーソンになってくる。新球種を習得する選手たちを、彼らはどう見ているのだろう。

 DeNAの木塚コーチは「長期的に見ないといけない」とこう語る。

「新球種を覚えようと探求心を持つことは、投手にとって大事だと思います。究極のピンチが訪れたときに、選択肢が2個しかないよりは3つ4つあった方が強みになります。

 でも、ベースには自分の得意なスタイルがあるということ。少し結果が出て『あの球を覚えたら良くなった』と簡単に思ったり、逆に悪かったとして、その球種を消すのではなく続けていった結果として、1年間探求してきてよかったねとなると思います。

 ビギナーズラックのようなこともありますから、一時的に評価するのではなく、長い目で見ていく必要があります」

 新しい球種はどうしても話題になるし、抑えた、打たれたという目先の結果に反応しがちだが、本来はそんなにすぐ判断を下せるものでもない。投手が進化していく過程で、新球種を掴もうとする姿勢が、彼らを大きくさせるのだ。

 たった1つの球種で、野球人生は大きく変わる。

 その瞬間をみるのも、選手を追いかける1つの楽しみである。

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