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長風呂と漫画と謝罪。
増田達至がつくる新たなストッパー像。 

text by

鈴木忠平

鈴木忠平Tadahira Suzuki

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photograph byHideki Sugiyama

posted2018/03/23 11:30

長風呂と漫画と謝罪。増田達至がつくる新たなストッパー像。<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

ストッパーが背負う“十字架”。

「何も言わない。反省もしない。逆にそういうことをしちゃいけないと思う。だって、クローザーはチームで一番いいピッチャーなんだから、そいつが打たれたら仕方ないと周りは納得するだけ。翌日の試合も自信満々でマウンドに上がらないといけないんだから。一番大事なのは自信。だから謝る必要も、反省する必要もないと思う」

 これを聞いた時、改めてストッパーという人種が背負う“十字架”を見た気がした。謝罪した瞬間に、反省した瞬間に、崩れ出してしまうものがある。一度、それが崩れてしまえば、もうあの極限のマウンドには立てないのだという。

 それが頭にあったから余計に増田の「謝罪」には凄みを感じた。まだ傷口がぱっくりと開いているうちに頭を下げる。彼の自信はそういうことでは揺るがない。かつ球場を去る時には綺麗さっぱり忘れている。まさに天然の太い幹のような肝っ玉だと想像する。

 それは増田が鈍感だったり、無神経だったりするという意味ではない。左翼のブルペンから勝利の瞬間を待つメットライフドームのマウンドへ向かう時はいつも特別な気持ちだという。

「先発や中継ぎ、ファンの思いを背負って、責任を感じます。だから今まで自分がやってきたことを思い浮かべながら、これだけやったんだという自信を持ってマウンドに上がります」

 そうして最後の3アウトを取り、もう一度、湯船に浸かってから家路につく。つまり、増田のハートは沸騰しているわけでも、凍てついているわけでもない。ちょうど自身が好む“ちょっと熱めの良い加減”なのだ。あらためて、そういうストッパーには滅多にお目にかかれるものではないと思う。

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増田達至

増田 達至Tatsushi Masuda

1988年4月23日、兵庫県生まれ。小学4年生の時に野球を始め、柳学園高校、福井工業大学、NTT西日本を経て2012年のドラフト1位で埼玉西武ライオンズに入団。1年目より一軍で活躍し、入団以来5年連続で40試合以上に登板。2015年にはパ・リーグ最多72試合に登板し、最優秀中継ぎ投手賞を獲得。2016年シーズン途中からストッパーを任され、2018年も活躍が期待される。180cm、85kg。

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