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小平智のドライバー探しは大変だ。
1g以下の違和感を消すための1本。 

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桂川洋一

桂川洋一Yoichi Katsuragawa

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photograph byYoichi Katsuragawa

posted2018/02/25 07:00

小平智のドライバー探しは大変だ。1g以下の違和感を消すための1本。<Number Web> photograph by Yoichi Katsuragawa

宮里優作と賞金王を争うなど、小平智は着々と日本トップクラスまで上り詰めた。マスターズ出場も視野に入っている。

330gのドライバーの1g以下の差を見破る。

 小平のドライバーは、ヘッドの平均的な重量が約202g、シャフトは76g。そのつなぎ目であるホーゼルは約7.5gで、ヘッド内部のグルーは5g。さらに50gのグリップを装着して完成する。合計で340g前後。

 問題となっているのは、そのうちのわずか1g以下。中村氏は「それを彼は見破るんですよ」という。実は、割れたヘッドは試合ではもう投入はできなくなったが、昨冬は製品テストの比較対象として使ってきた。フェースの「大好き!」は、その際に小平が自ら記したものだった。

 今年1月、小平はシンガポール、ミャンマーでの試合をいずれも2位で終えた。3月末の世界ランキングで50位以内を確保すれば、4月のマスターズに出場できる。目標に邁進し、クラブ調整でも試行錯誤をする毎日だ。

 1mm以下、1g以下、そんな違いがどれほどプレーに影響しようというのか。周囲がそんな風に感じるのも無理はない。しかし「僕はそう思わない」と中村氏は言う。

あらゆる球の種類を打つ小平の特徴。

 小平がプロギアと契約したのは2014年のはじめ。当時の小平はまだ、前年にプロ初優勝を遂げたばかりで、世間の評価は“期待の若手のひとり”に過ぎなかったが、中村氏の目には彼の異才ぶりが光った。

「最近の若い選手はドローだけ、フェードだけを打つという“一方通行”の選手が多い。その中で小平選手はドライバーでボールのスピン量をコントロールして、ドロー、フェード、高い球、低い球を打ったり、風に軽くぶつけて5ヤードくらい曲げてフェアウェイに置いたりと、いろんなボールを打っていた」

 頭にオーバーラップしたのは、その10年以上前に出向いたマスターズでのこと。フェード一辺倒でオーガスタナショナルGCの壁に跳ね返されたある外国人選手の姿だった。「小平って誰だ?」という意見を持つ社内の人間を、会議でパワーポイントも駆使して説き伏せ、今に至る。

【次ページ】 プロの中でも圧倒的に繊細なインパクト。

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