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小平智のドライバー探しは大変だ。
1g以下の違和感を消すための1本。

posted2018/02/25 07:00

 
小平智のドライバー探しは大変だ。1g以下の違和感を消すための1本。<Number Web> photograph by Yoichi Katsuragawa

宮里優作と賞金王を争うなど、小平智は着々と日本トップクラスまで上り詰めた。マスターズ出場も視野に入っている。

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桂川洋一

桂川洋一Yoichi Katsuragawa

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Yoichi Katsuragawa

 春の訪れを待つ東京・新橋。ビジネスマンが往来するビルの一角で、それは静かに眠っていた。

 シャフトが抜かれたゴルフクラブのヘッドには、フェース面の左上に油性マジックで記された「Sエース1」の文字。その下には「大好き!」と、素直な愛情表現が書き加えられている。

 メッセージがあることを除けば、このヘッドは何の変哲もない。ただ、わずかに角度を変えてフェース面に目を凝らすと、光の加減で細い一本の線が浮かんでくる。

 およそ1.5センチメートル、針か何かで引っかいたような傷跡。

 ドライバーの元の持ち主は昨年、日本男子ツアーの賞金ランキングを2位で終えた小平智。そして彼を長い間、苦しめてきたのがこの小さな傷である。

 ゴルフクラブは消耗品。男子選手はトップレベルにあるほど、一本一本を繊細に選ぶことが多い。得意にしている番手であればなおさらで、小平にとってドライバーは自他ともに認める生命線と言っていい。東京のオフィスにあるヘッドは、彼が昨年秋まで約9カ月にわたって試合で使い続けてきたもの。「Sエース」は「S(サトシ)のエース(ドライバー)」の意だ。

わずかな傷が、「割れた」サイン。

 しかしこれが今後、試合で披露されることはない。アクシデントが起こったのは昨年10月、日本オープンでのことだった。試合会場の練習場で、小平は違和感を持った。「ドライバーが“割れた”かもしれない」―――。彼とサポートスタッフの苦労はここから始まった。

 ヘッドが割れた、といっても、くす玉やニワトリの卵が割れるのとは違う。ゴルフクラブにおいては、上述したわずかな傷が「割れた」サインである。

「メディアで“割れた”と書かれると、木っ端微塵になったんじゃないか、と思う一般の方もいらっしゃるんですけどね」と苦笑いするのは、小平のクラブをサポートする中村好秀氏。横浜ゴムが展開するプロギア(PRGR)ブランドで長年、ツアープロをサポートしてきたその道のベテランだ。

【次ページ】 試したヘッドの数はおよそ30個。

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