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目標はおかず、日々少しでも上を。
初の五輪でも貫いた宇野昌磨らしさ。 

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松原孝臣

松原孝臣Takaomi Matsubara

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photograph byAsami Enomoto/JMPA

posted2018/02/18 12:00

目標はおかず、日々少しでも上を。初の五輪でも貫いた宇野昌磨らしさ。<Number Web> photograph by Asami Enomoto/JMPA

フリーの演技の最初の4回転ループで失敗して「笑いが込み上げた」と語った宇野。それ以降安定した演技で銀に輝いた。

五輪ならでは、という質問にも答えは一貫。

 今後につながるところは、との質問にも意外な返答だった。

「正直、今後のためにならないかなと思います。特別な緊張もしなかったし、新たな経験もしなかったので。ただ試合で成果を出すことができたのはよかったと思います」

 角度を変えて、初めてのオリンピックならではの経験、感じたことを聞こうとする数々の質問にも、宇野の答えは一貫していた。

 今シーズンの開幕前からそうだった。オリンピックはあくまでも通過点であり、目標ではないと語ってきた。

「皆さんがオリンピックは特別と言うんですけど、正直、僕には分からないんですよ」

 そう話したこともある。スタンスはオリンピックでも変わることがなかった。

 それとともに変わらないのは、少しでも上手になりたいという思いだ。今シーズンの最中には、こんなことを話していた。

「練習でやってきたことを出すのが大事ですし、少しでもよりよい演技、滑りができるように、という思いだけです。あまり遠くを見ることもないです」

「ループを失敗した時点で笑いました」

 2022年の北京五輪について尋ねられたとき、こうも答えている。

「僕は先のことはあまり考えないし、何が起きるか分からないので……あまりこれ、というのはないです。もちろん勝ちたいという気持ちはありました。全員の演技、点数を見て、どんな演技したらどんな順位になるか計算していました。ノーミス、完璧なら1位になると計算していました。でもループを失敗した時点で笑いました。その時点で自分のことだけ考えようと」

 勝ちたい思いはあっても、いつまでも向上し続けたいという思いが勝る。だからオリンピックも、その途上にある通過点だと考える。

 それはアスリートとして、独特のアプローチと言えるかもしれない。たいていは目標となる大会を設定し、そこへと進んでいくからだ。そのために必要な強化プランを練り、トレーニングを積んでいく。

【次ページ】 羽生とフェルナンデスとの抱擁についても。

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