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渡部暁斗「獲れるものを獲った」
4年前と同じNH銀はLH金への布石。

posted2018/02/15 11:40

 
渡部暁斗「獲れるものを獲った」4年前と同じNH銀はLH金への布石。<Number Web> photograph by JMPA

トレイルラン、ボルダリング、ヨガ、マウンテンバイク……、さまざまな練習方法を取り入れ今大会に臨んだ渡部暁斗。

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松原孝臣

松原孝臣Takaomi Matsubara

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JMPA

 4年前と同じ色のメダルだった。でも、その内実は大きく異なっていた――。

 2月14日、ノルディック複合ノーマルヒル。ソチ五輪に続いて銀メダルを獲得した渡部暁斗の表情は、明らかに前大会のときとは違っていた。

 試合は今大会での他競技でもよく見られた、風に影響を受けながらの展開となった。

 ワールドカップ総合1位で今大会を迎えた渡部は、前半のジャンプでは最終の48番目でのスタート。順番が近づくと、思わぬ展開が待っていた。渡部の前の2人が相次いで失速ジャンプに終わったのである。

 46番スタートのヨルゲン・グラーバクはワールドカップ総合3位、47番のヤン・シュミット(ともにノルウェー)は総合2位の実力者だ。にもかかわらず、グラーバクが90.0mの93.6点で23位、シュミットが88.0mの88.8点で31位と思わぬ結果に終わった。

 記録上は両者ともに向かい風だったが、先に飛んだ選手とは明らかに異なる、不利な風の影響下にあったことは容易に見て取れた。

8秒だけの心もとないアドバンテージ。

 そのあとを受けた渡部は、しかし105.5mの123.7点で3位につける。

「ジャンプの内容自体はまあまあ。あの流れに巻き込まれなくてよかったなというのはありました」

 渡部もそう振り返る。前の2人とは違いうまくまとめることができたのは、磨いてきた技術に加え、経験を重ねたことで得た落ち着きが大きかったと言えるだろう。

 ただ、後半のクロスカントリーに強い選手に対して、前半であまり差をつけられなかったのも事実だった。中でも、5位のエリック・フレンツェル(ドイツ)に対して、クロスカントリーで8秒のアドバンテージしか得ることができなかった。彼はソチ五輪の金メダリストであり、クロスカントリーに強みを持っていた。

 競り合いが予想される中、クロスカントリー(10km)が始まる。トップから28秒後にスタートした渡部は、先行する2人の選手を少しずつ追い上げていく。そして渡部の後方からは、フレンツェルらが接近してきていた。

【次ページ】 4年前と同じ負け方でも、表情はまるで違う。

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