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銀の平野歩夢と、金のホワイト。
2人だけが知るハーフパイプ新次元。 

text by

松原孝臣

松原孝臣Takaomi Matsubara

PROFILE

photograph byKaoru Watanabe/JMPA

posted2018/02/14 17:40

銀の平野歩夢と、金のホワイト。2人だけが知るハーフパイプ新次元。<Number Web> photograph by Kaoru Watanabe/JMPA

選手生命の危機とも言える大怪我を乗り越えての平野の銀メダル。前回の銀メダルより、ずっと価値ある大会となった。

平昌は「悔しい」だけで終わらなかった。

「ちょっと悔しさはあります」

 試合後、平野は言った。

 ただ、そんな思いばかりではなかった。

「楽しかったです。今まででいちばんの大会でした。自分が今できる範囲の中で全力を出せたと素直に思います」

 その表情は、言葉が偽りではないことを物語っていた。

 平野はソチのあと、フィジカルトレーニングをはじめ、さまざまな角度でレベル向上を図り、その中で世界で初めて連続4回転技をオリンピック前に完成させた。

 そして磨いてきた武器を、オリンピックでも成功させることができた。

 目指してきた世界一ではなくても、注いできた時間を表現することができたからこそ、悔しい、では終わらなかった。

平野の成長がホワイトを進化させた。

 そして平野の成長は、ホワイトの進化の媒介ともなった。決勝3本目、平野に続き連続4回転技を成功させたのは象徴的だ。

 平野が決めた1440のコンビネーションを決め返したホワイト。

 そのパフォーマンスを引き出した平野。

 両者は、共に過去大怪我を負い、そこから世界のトップを争う位置に戻ってきた。いや、戻るばかりでなく、より進化して平昌五輪へと臨んできたのである。

 セレモニーで、ホワイトと平野は互いを称えあう。平野も笑顔を浮かべる。2人だけが知る次元があるようだった。

 ハーフパイプのレベルを一段引き上げた歴史的な瞬間を目にした観客席から、両雄への拍手と歓声がやむことはなかった。

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