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葛西でも「気持ちがひるんじゃう」。
平昌ジャンプ台は、やはり酷すぎる。 

text by

松原孝臣

松原孝臣Takaomi Matsubara

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photograph byRyosuke Menju/JMPA

posted2018/02/13 12:20

葛西でも「気持ちがひるんじゃう」。平昌ジャンプ台は、やはり酷すぎる。<Number Web> photograph by Ryosuke Menju/JMPA

平昌のジャンプ競技では風の条件が違いすぎ、公平性が保たれたとは到底思えないが……。

小林潤志郎は着地した瞬間「なぜだ?」とばかりに。

 今シーズン、ワールドカップで優勝するなど台頭、ワールドカップ総合8位の成績とともに臨んだオリンピックだったが、1本目は93m。98.8点で31位、上位30名のみの2本目に進めずに終わった。

 小林潤志郎は、着地した瞬間、「なぜだ?」というように手を広げた。

「納得のいかない試合です。上の風に叩き落とされる感じがしました」

 試合後、こう振り返った。

 成績の上では有利な風を受けているとされ、その分だけポイントが引かれている。だが実際は踏み切り直後に追い風へと変わったことで、上から叩き落とされるような風を受ける中で飛ぶことになった。それは得点に反映されない、不運な風だった。

 前述したクバキは今シーズンW杯で優勝し、総合順位でも10位以内にいる実力者だが、小林とともに思いもよらないジャンプに終わった。この両者が飛んだときの風がもっとも厳しい状況だったことを示している。

 風にほんろうされたのは日本勢だけではない。ワールドカップ総合1位のストフ、2位のリヒャルト・フライタークも表彰台を逃したのだ。

「風は上の方だと音がすごかったです」(葛西)

 葛西は、こうも語っている。

「風は、上の方だと音がすごかったです。気持ちがひるんじゃうくらいで、信じられないです」

 ジャンプという競技は風に左右されることが前提であり、選手もそれは承知している。

 ただ、何度も中断を強いられるなど競技続行が危ぶまれるような今回の環境は、やはり酷であると言わざるを得ない。

 また酷だと感じさせた要因は、風に加えて、競技が行なわれた時間帯にもある。

 21時35分にスタートした試合が終わったのは、日付が変わった0時19分。本来は23時15分頃の終了を予定していたから、1時間以上、風による中断で押したことになる。しかも23時にはマイナス10度を下回るところまで気温が下がった。風が吹いているから体感温度はもっと低かった。

【次ページ】 「足先の感覚はあまりなくなっていました」

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