松山英樹、勝負を決める108mmBACK NUMBER

松山英樹、棄権しても明日は来る。
ファウラー「ヒデキ、またやろうな」 

text by

舩越園子

舩越園子Sonoko Funakoshi

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photograph bySonoko Funakoshi

posted2018/02/05 17:30

松山英樹、棄権しても明日は来る。ファウラー「ヒデキ、またやろうな」<Number Web> photograph by Sonoko Funakoshi

ショット後すぐに左手をクラブから離す松山英樹。普段は痛みを表に出さないゴルファーだけに、相当な激痛が予想される。

「プレーしてダメなら納得いきますけど……」

 2日目のスタートは午後12時2分だった。いつものルーティーン通り、1時間半ほど前にコース入りした松山は、まずパット練習、そしてドライビングレンジへ。

 しかし、そこから先はいつも通りとは行かず、明らかな異変を見せた。ウエッジで1球、2球。すぐさま飯田トレーナーのマッサージを受けた。飯田トレーナーは左手首周辺のみならず左肩や左腕にも手を伸ばし、治療を試みた。だが、松山はまた1球、2球、打っては手を止め、再びマッサージを受けることの繰り返し。

「もう無理。昨日の時点でスイングもおかしくなりかけていたし、今日も何球か打ったけど、もうスイングできない。(今後に)影響あると思って、やめました」

 苦渋の決断。無念の途中棄権。松山の3連覇は夢と化した。

「プレーしたかった。(3連覇は)プレーしてダメなら納得いきますけど、できないのは一番辛い」

「いろんな治療をしてもらったけど、今までなら治るはずが今回は治らなかったのは残念。今までとは違う、初めての痛みです。表現できないぐらい痛い」

「無理してやったらできるかもしれないけど、やってしまったら、一生ゴルフができないんじゃないかっていう怖さがある。それぐらい痛いので、やめたほうが賢明かなという感じです」

途中棄権を決意したとき、松山は落ち着いていた。

 痛みの元凶は左手の親指の付け根なのか、手首なのか、左腕、左肩なのか。「原因を調べて次の試合(ジェネシス・オープン)に間に合うように。それもダメならメキシコ、フロリダ(アーノルド・パーマー招待)からかな」と、復帰の見通しも今は立てようがない。

 4月のマスターズの前に何試合出られるのだろうか。いや、マスターズそのものに間に合うのだろうか。3連覇をかけて臨んだ大会は、突如として、メジャー出場さえ危ぶまれる状況へ早変わりした。

 だが、どんな苦境の中でも、1つでも2つでも救いを見出すことさえできれば、希望は抱ける。最大の注目を集める選手でありながら、途中棄権を決意したそのとき、松山は取り乱すことも怒ることもなく、驚くほど落ち着いていた。

 それもまた過去の途中棄権や欠場を決意したときとはまるで異なる彼の「異変」。いや、それは異変と言うより「成長」と呼ぶべきだろう。

「チームで考えて、日本に帰るのか、こっち(アメリカ)で検査を受けるのか。しっかり痛みのない状態でプレーしたい。無理する必要はないので」

 そう言って、松山は去っていった。

【次ページ】 松山もファウラーも、「またやろうな」と。

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