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「やっぱり世界を目指さなあかんのですよ」
伝説のシューズ職人・三村仁司の“熱源”。

posted2018/02/13 11:00

 
「やっぱり世界を目指さなあかんのですよ」伝説のシューズ職人・三村仁司の“熱源”。<Number Web> photograph by Kenta Yoshizawa

text by

小堀隆司

小堀隆司Takashi Kohori

PROFILE

photograph by

Kenta Yoshizawa

 60歳で定年を迎えたあの日、第二の人生がこれほど忙しくなることを想像しえただろうか。

「もう70(歳)やからね。あんまり期待してもらっても困るんやけど。まあ期待されるというのは嬉しい反面、しんどいことでもあるわね」

 そう言って、現代の名工はにやりと笑う。

 シューズ職人として50年以上にわたって現場に立ち続ける三村仁司が今年、新たにボストン本社のニューバランスとグローバル・パートナーシップ契約を交わした。

 契約が正式発表された1月17日の「ニューバランス新戦略発表会」にはニューバランス ジャパンの冨田智夫社長だけでなく、米国ニューバランス社 グローバル・ランニング部門 副社長のトム・カーリオ氏も急きょ来日。およそ100名もの報道陣が集まったのも、この手の会見では異例のことだった。

「職人を続ける以上は世界を目指さなあかんのです」

 注目が集まったのはむろん、三村が唯一無二の経歴を誇るクラフトマンであるからに他ならない。

 2009年に国内シューズメーカーを退社後、自身の工房M.Lab(ミムラボ)を立ち上げていた三村にとって、今回の契約は人生の集大成と位置づける新たな挑戦となる。

 あらゆる事象がデータや数字で解明されつつある現代において、経験や勘を頼りにするクラフトマンシップがなぜ有用なのか。決断に至った心境を、次のように語る。

「やっぱり職人を続ける以上は世界を目指さなあかんのですよ。選手から求められ、メーカーから求められるうちは現役にこだわりたい。ニューバランスは世界のベストランニングブランドになることを目指しますと。方向性が同じやったから、ここならやりたいことができると思ったんです」

 三村のやりたいこと――それは、日本のアスリートを自身のシューズで檜舞台の真ん中に立たせることだ。とりわけ走る距離が長く、そのぶんシューズが果たす役割が大きくなるマラソン種目において、思い入れは強い。

【次ページ】 高橋尚子のために辞職覚悟で作ったシューズ。

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