初優勝に涙の憲剛、ジュニーニョからの祝福。

　長らく夢見ていた景色が現実のものになった中村憲剛は、こぼれ落ちるものを止められず、等々力のピッチで泣き崩れた。プロ初のハットトリックを達成したキャプテンの小林悠は、そんな中村を探して駆け寄り、涙ながらに包擁した。キャプテンマークを巻いてきた者同士にしかわからない思いが交錯したこのシーンは、クラブ史に刻まれるハイライトだ。

　初優勝後、クラブには多くの祝福が届いた。

　サッカー以外にも様々な異業種とのコラボ企画を積極的に展開してきたがゆえの結果だろうが、海外からメッセージ動画を届けてくれたクラブOBもいる。とりわけサポーターが湧いたのが、「川崎の太陽」と呼ばれて愛された、ブラジル人FWジュニーニョだ。

　中村憲剛と小林悠の存在は、初戴冠の軌跡を語るときに欠かせない。そして、その両者に大きな影響を与えたのが、このストライカーなのである。

横パスに「なんで俺に入れないんだ！」と怒られた。

　在籍していたのは、2003年から2011年までの9シーズン。

　'07年のJリーグ得点王にも輝いた点取り屋は、まだ若手だった中村憲剛を日本を代表するパサーに育て上げ、J1に復帰したクラブを攻撃的な強豪に押し上げた象徴的存在でもあった。

　中村自身も「ジュニーニョなしでは今の自分はあり得なかった」と認めるほどの出会いであり、当時の思い出をこんな風に話してくれたことがある。

「今でも覚えているのは、2004年の京都サンガ戦。ずっと『横を向くな。前を向け。そして俺にボールを入れろ』と言われたんだけど、一度、ジュニーニョにパスを出せるタイミングで、ビビッて縦パスではなく横パスを選択してしまったんです。そうしたら、『なんで俺に入れないんだ！』ともの凄く怒られた」

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