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スポーツの誤審に法的責任はあるか。
審判を告訴、プレーを無効にできる? 

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小塩康祐

小塩康祐Kosuke Ojio

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photograph byBob Thomas/Getty Images

posted2018/01/08 08:00

スポーツの誤審に法的責任はあるか。審判を告訴、プレーを無効にできる?<Number Web> photograph by Bob Thomas/Getty Images

1986年メキシコW杯準々決勝での“神の手”。このプレーでの得点もあって、イングランドに勝利したアルゼンチンは、最終的にその大会で優勝した。

審判の地位と誤審の責任の重さを考える。

 審判は、試合中においては唯一の事実の判定者等と定められており、絶対の存在とされています。

 最近では、審判が確認できなかったプレーを判定するために、ビデオ判定が導入される競技も多くなっており、誤審の数は減っているのかもしれません。もっとも、ビデオ判定が導入されていても、誤審がなくなることはないでしょう。それでは、誤審について審判が法的責任を負うことはあるのでしょうか。

 裁判においては、法律上の争訟に該当しない(裁判所が判断する事項にはなじまない)として裁判所が最終的に判断をすることは難しいと考えられています。その他の紛争解決手段として、「スポーツ仲裁(スポーツ競技又はその運営をめぐる紛争を、迅速に解決することを目的とした紛争解決手続)」という方法を用いるということも考えられますが、スポーツ仲裁においては、競技中の審判の判定については争えないこととされている(スポーツ仲裁規則2条1項)ので、誤審について争うことは難しいです。

 もっとも、誤審に対する法的責任について争われた例も存在します。

 例えば2015年、国内の女子バスケットボールの試合において、審判の判定に不服があったチームが、審判に対して、損害賠償及び謝罪広告の掲載を求めて訴訟提起をした事例があります。

 結果として、裁判所が判断をする前に、訴訟は取り下げられましたが、審判の責任を問う裁判が起こされたということは注目されました。この事案は、単なる誤審の責任を問うということではなく、審判が、故意に(わざと)誤審をしたのではないかということが争われたという事案でした。

 審判が、故意に誤審をしたような場合、いわゆる八百長を行ったような場合には、法的責任を問われる可能性もありますが、仮に誤審があったとしても、そのような場合を除いて、法的責任を負うことは考えにくいといえます。

法的責任は負わなくとも、謝罪や処分が出されることも。

 もっとも、法的責任を負わないとしても、審判が誤審を認め、謝罪をすることや関係者が処分される例はあります。

 例えば、ハンドボールの高校大会における誤審があった事例において、全国高等学校体育連盟は裁定委員会を開き、大会の競技委員長を更迭し、日本ハンドボール協会が「多大なご迷惑をおかけしました。再発防止に努めるとともに迅速に対処する所存です」とコメントしたこともあります。

 他の競技団体においても、試合後に審判や関係者が誤審について謝罪をすることは少なくありません。

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