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富山第一・大塚監督の革新的戦術。
攻撃的5バックと“14ゾーン”とは? 

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安藤隆人

安藤隆人Takahito Ando

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photograph byTakahito Ando

posted2017/12/26 17:00

富山第一・大塚監督の革新的戦術。攻撃的5バックと“14ゾーン”とは?<Number Web> photograph by Takahito Ando

県内出身選手だけでも戦えるメソッドを組み立てた大塚監督。その指導力は高校サッカー界屈指だ。

「今年の僕のコンセプトは“14ゾーン”」

 チームの基本フォーメーションは5-3-2(5-1-2-2のような形にもなる)。数字だけを見ると5バックのため、かなり守備的な布陣に見える。しかし実際に試合を見てみると、理に適った“攻撃的フォーメーション”なのだ。大塚は、独特の表現で自らの狙いを明かす。

「今年の僕のコンセプトは“フォーティーン(14)ゾーン”をどう生かすかなんです」

 大塚が語る“14ゾーン”とは何か。

 仮にサッカーフィールドのハーフコートに縦2本、横2本のラインを加えたとしよう。すると縦と横にそれぞれ3つ、合計すると9つのゾーンが生まれる。それをフルコートで見た場合、ピッチ全体を18分割できる。

 この計18のゾーンを、自陣右から1、2、3……と数えると、相手陣内ペナルティーエリア前の中央付近が14番目となる。この14番目のエリア=14ゾーンこそ、ゴールを奪う上で重要となる。

「日本で言う“バイタルエリア”を、イングランドでは14ゾーンと呼んでいます。膨大な量の分析の結果、得点の9割はボールがそこを通過もしくは経由していることが分かったんです。この14ゾーンからスルーパス、ワンツー、サイドへの展開、ミドルシュートと幅広い選択肢の中で、選手達が状況に合わせて質の高い判断をすることで、最終的にゴールに繋がっている。だからこそ、我々はそこをいかに有効活用できるか、守備面ではそこを通過させないようにするかを考えて、フォーメーションや戦術を組み立てました」

「“アンダーラップ”も頻繁に入れて欲しい」

 この理論でキーになるのはアンカー、ツーシャドー、2トップだという。

「まず守備面です。相手から見た時の14ゾーンを通過させないために、真ん中の守備を厚くする。よりプレスがかかるように、3バック・3ボランチで選手を並べます。逆に攻撃時には14ゾーンを狙って、2トップ・2シャドーが連動して崩していく。ポイントはこの4人に対してウイングバックがどう絡むかです。

 イメージとしては5バックになるのではなく、両ワイドがアップダウンを繰り返すこと。重要なのはそのアップダウンの質になります。ただサイドを攻め上がるのではなく、例えば相手のシステムが4-4-2だったら、相手のサイドハーフとサイドバックの内側を駆け上がって行く“アンダーラップ”も頻繁に入れて欲しい。そうすることで、ウイングバックも14ゾーンに入り込めるようになりますから」

【次ページ】 '12年ユーベのピルロ、ポグバ、ビダルのように。

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