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武豊とキタサンのハッピーエンド。
名馬の枠を超えた絶対スターの引退。 

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島田明宏

島田明宏Akihiro Shimada

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photograph byYuji Takahashi

posted2017/12/25 11:30

武豊とキタサンのハッピーエンド。名馬の枠を超えた絶対スターの引退。<Number Web> photograph by Yuji Takahashi

早くから注目されていた馬では決してなかった。そのキタサンブラックが国民的スターになるのだから、競馬は面白い。

この日、武豊は他馬の騎乗を断って有馬だけに専念。

 この日は、ほかのレースには騎乗せず、有馬記念ひとレースだけに絞っていた。

「他馬の関係者が理解を示してくれたことに感謝しています。とにかく悔いが残らないよう、いい走りをさせてあげたいと思っていた。本当に強い馬です。こういう馬にめぐり会うことができて、幸せです」

 これが武にとって有馬記念3勝目。岡部幸雄、田原成貴、オリビエ・ペリエ、池添謙一につづく史上5人目の最多タイ記録だ。過去の2勝は、1990年のオグリキャップと、2006年のディープインパクト。どちらもキタサンブラックと同じく、国民的スターホースの引退レースだった。

「ラストランに強いですね」と言われると、「いや、ぼくが勝っているのは、すごい馬だけだから」と謙遜する。

GIは最多タイ7勝、賞金歴代トップで年度代表馬も確実。

 最終レース終了後に行われたキタサンブラックのお別れセレモニーでは、スタンドのファンから「ユタカー、『まつり』歌って!」と声が飛んだ。これまで同様、北島オーナーの隣で手拍子をとるだけかと思われたが、サビの部分だけ小声で口ずさんだ。

「キタサンブラックに乗っていると、歌わされそうになるという、余計なプレッシャーがありましたね(笑)。ウタじゃなく、ウマですから。ぼくは歌手じゃなく、騎手ですし」

 と周囲を笑わせ、こう締めくくった。

「キタサンブラックに対しては、ありがとうしかない。ぼく自身すごく勉強になったし、騎手として成長させてもらいました」

 キタサンブラックのJRA・GI勝利は、2015年菊花賞、2016年天皇賞・春、ジャパンカップ、2017年大阪杯、天皇賞・春、天皇賞・秋、有馬記念の7つとなった。これは、シンボリルドルフ、テイエムオペラオー、ディープインパクト、ウオッカと並ぶ最多タイ記録だ。

 そして、1着賞金3億円の有馬記念を制したことで、通算獲得賞金が18億7684万3000円となり、テイエムオペラオーの18億3518万9000円を抜き、歴代トップとなった。

 格の高いGIばかり4勝した今年も、昨年につづき、ほぼ確実に年度代表馬に選出されるだろう。

【次ページ】 ルメールもキタサンブラックの鼻筋を撫で……。

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