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明大ラグビーは今度こそ甦るか。
新コーチが語る帝京大との差とは。 

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大友信彦

大友信彦Nobuhiko Otomo

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photograph byNobuhiko Otomo

posted2017/12/21 07:00

明大ラグビーは今度こそ甦るか。新コーチが語る帝京大との差とは。<Number Web> photograph by Nobuhiko Otomo

12月3日、秩父宮ラグビー場で行なわれた早明戦勝利の瞬間。両手を突き上げる背番号4が古川満主将。

「コミュニケーション力」こそ強さの最大の秘訣。

 帝京大の強さについて、全国から有望な高校生をあつめるスカウト力、多数のフルタイムコーチがいる練習環境、恵まれたトレーニング設備で養われた頑強なフィジカル力などをあげる声は多いが、田中の目には「コミュニケーション力」こそ強さの最大の秘訣と見えていたのだ。

 それは、どう攻めるか、どう守るか、というオプション判断に限らない。アタックでもディフェンスでも「ガマンを続ける」という意思を共有し、互いを確かめ続け、励まし合うというチームワークの領域も含んでいる。

 早明戦、明大は我慢強いディフェンスを続けた。タックルで相手を止めたら、密集で過剰にエネルギーを割かずに次のディフェンスに備えた。ディフェンス時のブレイクダウン(密集でのボール争奪戦)で圧力をかければ相手のリズムを奪える可能性もある反面、次のディフェンスに割けるエネルギーは薄れてしまう。

 功を急ぐよりも、ガマン。

 アタックも同じだ。密集回りの相手ディフェンスが厚いからと言って、トライを取り急いで、最初から外で勝負すれば相手の思うつぼだ。相手がいやがるところをガマンして攻め続け、相手ディフェンスを崩すことができれば、大きな成果を得られる。そのために、試合中コミュニケーションをとり続ける。

早明戦の終盤でも15人の意識は共有されていた。

 一例をあげる。早明戦の終盤、後半34分、14点差を追う早大のSO岸岡智樹が左隅ゴールに迫った。明大の1年生FB山沢京平がタックルに行く。これがハイタックルと判定され、反則がなければ確実にトライだったと見なされ、早大にペナルティトライの7点が与えられた。ワンプレーで同点に追いつける点差だ。

 ここで明大は、次のキックオフを自分たちで確保しに行くのではなく、深く蹴ることを選択した。その結果、ボールを動かしてくる早大にプレッシャーをかけ、逆にPKを獲得。SO忽那鐘太がPGを蹴り込み、勝負を決めた。

 現在の早大には、長い距離を攻め返してトライを取りきる得点力はないと見抜いての判断であり、その狙いを15人が共有したからこそのディフェンスだった。

【次ページ】 「オレたちはこれだ、これを信じて戦うんだ」

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