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キック大会『KNOCK OUT』が1周年。
成功の鍵は「普通のビジネス」!? 

text by

橋本宗洋

橋本宗洋Norihiro Hashimoto

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photograph bySusumu Nagao

posted2017/12/17 08:00

キック大会『KNOCK OUT』が1周年。成功の鍵は「普通のビジネス」!?<Number Web> photograph by Susumu Nagao

メインイベントの森井洋介(写真左)vs.勝次は、森井がKOで激勝。森井はトーナメントの3戦すべてでKO勝ちという快挙だった。

“保守本流”の競技性から異なる価値観へ。

 キックボクシングは沢村忠の時代から続く、いわばプロ格闘技の保守本流だ。だがKNOCK OUTはそうした方向性での打ち出し方をしていない。

 花澤がその理由を解説してくれた。

「旗揚げ当初は“本物”というキーワードを使っていたんですよ。でも考え方を変えました。本物って、強さだけではないなと。人気も集客力も備えてこその本物だろうと。KNOCK OUTはプロ興行ですからね」

 だからKNOCK OUTでは、単にムエタイの強豪を招聘することや“打倒ムエタイ”を至高の価値観とは捉えていない。

「僕自身はムエタイと闘ってきて、その強さも知っているしムエタイを面白いと思います。でもKNOCK OUTでは強いタイ人イコール素晴らしい、ではない。もちろん出さないというわけでもないですよ。KNOCK OUTというプロ興行に向いているタイ人なら出てほしい。それは日本人選手と同じです」と小野寺。

もっとキャラクターやドラマ性を提示してみたい!

 幅広い層に実際に見てもらうために必要なのは、強さや競技性といった価値観ではない。花澤によれば「キャラクターやドラマ性でしょうね。KNOCK OUTとしては“どっちが強いか”ではなく“どっちを応援したいか”を提示しようとしています」。

 両国大会でライト級初代王者となった森井洋介をはじめ王座決定トーナメント参加者について、TOKYO MX他で放送中のレギュラー番組ではキャラクターとドラマ重視の見せ方をした。

“野良犬二世”と呼ばれる森井なら、その本家(兄弟子)であるかつての名選手“野良犬”小林聡のこと、小林と森井の関係性から丁寧に伝える(ここで「小林聡なんて一般層は知らないよ」と切り捨てないのもポイントだろう)。

 森井と対戦した勝次は“新日本キックボクシング協会のチャンピオンがついに参戦”ではなく“蒲田のロッキー”というニックネームをつけ、親しみやすさを強調した。「そうしたことも含めて、我々としてはオーソドックスなことしかしていないんですよね。CMなどのパブリシティもそうです」(花澤)。

【次ページ】 1年の費用はソシャゲ開発より安かった。

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