箱根駅伝PRESSBACK NUMBER

箱根を走れるかどうかの天王山。
学連の記録会で勝った者、敗れた者。 

text by

神津伸子

神津伸子Nobuko Kozu

PROFILE

photograph byNobuko Kozu

posted2017/12/17 09:00

箱根を走れるかどうかの天王山。学連の記録会で勝った者、敗れた者。<Number Web> photograph by Nobuko Kozu

大学としての出場が絶たれた後、選手個人としての箱根出場が懸かる記録会。ここも、もう1つの箱根への道なのだ。

気温が下がり、空が暗くなる中アクシデントが起こる。

 1周400mのトラックを25周するレースが、時間通りにスタートした。1000m通過が3分2秒というスローペース。前半は大集団の団子レース、先行していないと上がって行くのも他の選手が邪魔になる、難しい展開となった。

 注目の東大近藤、彼をピタリとマークする筑波の相馬、慶應の根岸祐太らは、大集団の末尾の方に位置していた。近藤のフォームは省エネ仕様で、大きく腕を振り上げることもない言わばヒタヒタ走りで、かえって不気味さを増す。

 集団はしばらく崩れることがなかった。気温はどんどん下がり、闇に包まれていく。各チームの仲間や応援団から檄が飛ぶ中、アクシデントが起こった。選手の1人が転倒し、他の選手も巻き込まれるのではないかと、凍り付くような空気に包まれたが、他の選手はなんとか危機を逃れた。

 レースは中盤からペースが上がる。近藤は静かにじわじわ順位を上げていく。調子の悪さを微塵も感じさせない軽快なピッチだ。

 さらに中盤からレースを牽引していた最年長、東京国際大の渡邊はまさかの途中棄権となった。

東大・近藤はルール変更の恩恵も受け、初の箱根へ。

 最終的には、近藤が合計タイムで2位以下に25秒以上の差をつけて、文句無しの本戦出場権を得た。

 1、2年時も予選会で記録を残し、登録メンバーに入りながら補欠に回っている。そして従来の連盟ルールでは、箱根駅伝を走らないまま選手生活を終えるところだった。

 学連チームは前回まで「登録を含む本戦出場が1回以内の選手」が対象だった。そのルールでは、過去2度補欠だった近藤は前回限りで資格を失うことになる。が、今年7月から対象が「本戦出場経験がない選手」となった。

 予選会で箱根駅伝常連校のエース級と対等に走り、59分54秒の好記録で学連チームトップの個人総合20位となっていた。その後、青学大の強化合宿にも参加した。同じ静岡県出身で中学校時代からライバルの青学大エース4年、下田裕太が一緒だった。近藤は「下田の声はよく聞こえた」と記録会での応援に感謝した。

 東大生の本戦出場は、2005年に学連の8区を走った松本翔以来となる。

「3度目の正直、やっとです。本番では1区を走り、東大陸上部の存在感を示したい」と話し、学連チームの主将も務めることになる。希望通りの1区での常連校ランナーたちとのガチ勝負が、今から待ち遠しい。

 学連チームの武者監督も「キーは近藤」と、先日の各校監督会見で明言した。

【次ページ】 再来年の大河ドラマの主人公を生んだ筑波からは。

BACK 1 2 3 4 NEXT
近藤秀一
相馬崇史
根岸祐太

陸上の前後の記事

ページトップ