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宇野昌磨を育てた2人のコーチ。
師弟関係というよりも、信頼関係。

posted2017/12/07 16:15

 
宇野昌磨を育てた2人のコーチ。師弟関係というよりも、信頼関係。<Number Web> photograph by Asami Enomoto

名古屋からフィギュアスケートの才能が次々と出現する背景には、2人(左:山田コーチ、右:樋口コーチ)の存在がある。

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稲田修一(Number編集部)

稲田修一(Number編集部)Shuichi Inada

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Asami Enomoto

 東海地区における“フィギュアスケートの聖地”名古屋スポーツセンター。伊藤みどりをはじめ、恩田美栄、中野友加里、浅田真央、村上佳菜子など、数々の名選手がこのリンクから世界の舞台へと飛び立っていった。

 11月23日、この通称“大須のリンク”を訪れると、ちょうど前日に掲げられたという宇野昌磨の巨大な写真パネルが、練習する子供たちを見守っていた。

 宇野は5歳のときに遊びに来た際、浅田真央に声をかけられ、フィギュアスケートを始めたという。それから約15年経ち、いまや世界の頂点を争うトップスケーターへと成長した。今季はスケートカナダで優勝、フランス杯で2位となり、12月7日から地元名古屋で行われるグランプリファイナルの切符を見事に掴み取った。

 彼を手塩にかけて育てたのが、中部地区におけるプロコーチの先駆けである山田満知子コーチと、その下で長年アシスタントコーチを務めてきた樋口美穂子コーチである。現在は樋口コーチがメインで宇野の指導をし、振り付けも担当している。

 Number最新号の男子フィギュアスケート特集「銀盤の決闘」では、この2人のコーチが宇野をどのように育ててきたのか、その指導法を探る記事をライターの野口美惠氏が執筆している。ここでは、宇野の素直な性格、誰からも愛されるキャラクターがどのように育まれたのかについて、少し紹介したい。

「自分のおばあちゃんと思ってるんじゃないかな(笑)」

 2人のコーチに共通しているのは、上から押し付けるような師弟関係ではなく、しっかりと言いたいことを言い合いながら前へ進んでいく信頼関係が結ばれていることだ。

 山田コーチは笑顔でざっくばらんにこう話してくれた。

「私はあまり、コーチと選手っていう仕切りを作りたくないんです。普通、コーチと選手ってちょっと隔たりがあるじゃないですか。(伊藤)みどりなんかでも、家に引き取って一緒に生活をしたりとか、カナ(村上佳菜子)も遊びに来ては一緒にお風呂に入ったりとか。私は今も小さい子を教えていますけど、子供と一緒に楽しんだりするのが好きなんです。

 レッスンしてても、1つのジャンプが跳べるようになると、次のジャンプに行く? って聞きます。それですぐに次に行きたいっていう子もいれば、もう少し練習したいっていう子もいる。相談していく上で、その子のことが分かってくるんです。昌磨もたぶん、私に対して怖いコーチとか、一線を引かれてると思ったことはないと思います。そういう意味では、和やかな雰囲気の中で、スケートを教わってたという感じが昌磨にはあると思いますね。昌磨は私のことを先生というより、自分のおばあちゃんと思ってるんじゃないかな(笑)」

【次ページ】 最近は振付も相談しながら2人で決めている。

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