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大迫傑が作った日本の新スタンダード。
マラソン界に刻まれた2時間7分19秒。 

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生島淳

生島淳Jun Ikushima

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photograph byKyodo News

posted2017/12/05 17:00

大迫傑が作った日本の新スタンダード。マラソン界に刻まれた2時間7分19秒。<Number Web> photograph by Kyodo News

東京五輪の代表選考会の出場権をはやくも獲得した大迫傑。早めに決められたことで、本大会から逆算しての調整が可能になるメリットは大きい。

瀬古リーダー「日本記録を破るのも時間の問題」

 東京オリンピックに向け、日本マラソン界の再生計画を練る瀬古利彦プロジェクトリーダーは、ほくほく顔だった。

「大迫君、2回目のマラソンで期待以上の走りをしてくれました。『天晴れ』をあげたいです。彼が4年生の時の箱根駅伝では『喝!』をあげたんですが、よくぞ成長してくれました。高岡(寿成)君が持っている2時間6分16秒の日本記録を破るのも時間の問題でしょう」

 今回の福岡国際マラソンは、2019年9月以降に行われる東京オリンピックの代表決定レース、『マラソングランドチャンピオンシップレース(MGCレース)』のいわば予選も兼ねていた。

 大迫とともに日本人2位に入った上門大祐(大塚製薬)、同じく3位になった竹ノ内佳樹(NTT西日本)の3人はMGCレースへの出場権を確保したわけだから、今後MGCレースまでにどのようなトレーニング、調整をしようと自由だ。極端な話、もうフルマラソンを走らなくても良いわけだ。

10000mとマラソンの両方で日本記録!?

 しかし、瀬古リーダーは大迫の「来年」に期待を寄せる。

「大迫には来年、10000mとマラソン、両方で日本記録を狙って欲しいんです。スピードとマラソンは両輪だからね。今後彼と話し合いますけど、そうすれば大迫自身の可能性も広がるし、他の選手たちの刺激にもなる」

 そして瀬古リーダーは、100mで9秒98の日本記録をマークした桐生祥秀の名前を例に出しながら、大迫の果たすこれからの役割を話した。

「大迫には、マラソン界の『桐生君』になって欲しいと思ってます。桐生君が9秒台を出したことによって、何人もの選手たちが9秒台を目指しているわけで、そのおかげで短距離界全体がドッカーンと盛り上がってるわけでしょ。マラソンも、大迫を目標に全員が高い目標を持って挑戦してくれると期待してます」

【次ページ】 「大迫スタンダード」は、かなり高い基準だ。

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