2度望んで、2度とも望まれなかった、という答え。

　実際に、プロに入ってから現場のコーチに自分を指名した理由を訊いたら、「頑丈そうだから、ブルペンキャッチャーなら使えるってことでな」と、折れるような返事が返ってきた。そんな話はいくつも聞いたことがあるという。

「僕の場合は、2度望んで、2度とも望まれてなかった。それが、野球の神さまからの“答え”だと考えました、プロからの答えだと思うとくやしいから」

　数年間でも人の世でもまれてきた人間の厚みのようなものを感じた。

「今、僕の目の前に300枚の名刺があるんです」

　なんの話かと思った。

「これ、僕が今年、新しく仕事で出会った人たちの名刺なんです。プロに進んでたら、1年でこんなにたくさんの人たちと出会うってあるんですかね……まだ、そんな大きな仕事もしてませんけど、それでも、たまには自分を世界の真ん中に置いて考えたり、判断しなきゃならない場面もありますし。そう考えると、野球の世界はそこまで広くないのかも……」

　語尾のボカシが、気遣いを感じさせた。

「それが、高校、大学、2度とも指名漏れになって、プロから望まれなかった自分が学んだこと……それと見えてきたこと、だと思います」