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活躍した選手より取材対象への愛。
プロ野球MVP投票、“忖度”の度合い。
 

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鷲田康

鷲田康Yasushi Washida

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photograph byKyodo News

posted2017/11/25 11:00

活躍した選手より取材対象への愛。プロ野球MVP投票、“忖度”の度合い。<Number Web> photograph by Kyodo News

2017シーズンのMVPを獲得した丸とサファテ。この2人の選出について異論は少ないだろう。

メディア側からも警鐘を鳴らす記事が出ている。

「取材経験5年以上」という投票資格に込められる意味はいったい何なのか? それはプロ野球を日常的に観て、取材して、築き上げられたプロの観戦者としての客観的で公正な視点ということのはずなのだ。

 ましてや取材記者はファンとチーム、選手をつなぐためにグラウンドの中に入れる特別な権利をもらっている。そのことへの責任や自覚は常に自問自答すべきなのだろう。

 ただ今回、少しホッとしたのが、メディアの側から、こうした投票結果に警鐘を鳴らす記事が出ている点だった。

昔からベストナインすべて巨人、という記者もいた。

 11月23日付スポーツニッポンの内田雅也記者による「広角追球」が、この問題を正面から取り上げている。

「甲子園から日本、世界を見る――新人王投票の偏愛問題」と題されたコラムでは大山は、「阪神待望の大砲候補としてよくがんばった。ただし、新人王を獲れるほどの成績ではなかった」と指摘。この結果へのネット等での批判に対し「もっともな指摘で、同じ野球記者として恥ずかしく、耳が痛い」と率直な感想を記している。

 その上で「推測」と断りながら、大山への49票は関西を拠点にする記者ではないかとし、「軽い気持ちで阪神愛を示した者がいるかもしれない。この軽さは自身の責任の重さにあまりに無自覚で、賞の権威を損ねている」と断罪しているのである。

 結論として内田記者は、そういう「偏愛投票」は記者の自覚の問題だと指摘する。

 ただ、これまでも幾度となく同じことは繰り返されてきているし、その原因は記者個人というよりこの記者投票のシステムの問題でもあるだろう。 

 実はここ数年は広島が強くなったことで目立たなくなっているが、ずっとカープの選手にしか投票しない広島在住の記者もいる。昔はベストナイン全ポジションに巨人の選手の名前しか書かないと豪語する先輩記者もいた。

【次ページ】 MLBでは誰がどんな投票をしたか公表されている。

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