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大阪桐蔭最強世代の中心は変り種。
あらゆる意味でマルチな男・根尾昂。 

text by

氏原英明

氏原英明Hideaki Ujihara

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photograph byKyodo News

posted2017/11/17 07:00

大阪桐蔭最強世代の中心は変り種。あらゆる意味でマルチな男・根尾昂。<Number Web> photograph by Kyodo News

史上最強世代とも言われる大阪桐蔭の中心、根尾昂。最も野球的に見える場所に、野球的でない選手が登場したことも興味深い。

大阪桐蔭でも目立つ体幹は、どう身につけたか。

 根尾の体幹が人並み外れているのは、野球以外のスポーツで培った力が大きい。中学時代、アルペンスキーの男子回転で全国大会の頂点に立ち、世界大会も経験した。高校に入る前の時点ではスキー歴の方が長いくらいで、野球を本格的に始めてからもオフシーズンには必ず雪上に足を運んでいたほどだ。

 体幹の強さは、そこで得たものだと根尾はこう語っている。

「スキーでは頭が落ちたり前にぶれた時点で、ミスになって転倒したり、バランスが崩れるんです。そうしないために、身体がブレないように鍛えてきました。下半身を動かした上で、身体がブレないというのがスキーでついた力です」

 そう大きくない体躯ながら、打球がスタンドまで飛び、守備面では身体を反転させる動きがずば抜けて速く、投げればストレートが148kmを計測するのはそのためだ。「ピッチャーをやっている時の、一塁ベースのカバーも速い」と有友部長が付け加えてくれたが、体幹の力が生きているのだ。

個人競技の経験が、野球でも生きている?

 最近のスポーツ界では、多種の競技を経験することが重要だという考え方が広まっている。

 運動神経が発達しやすい、特にゴールデンエイジと呼ばれる年齢の時に、1つの競技ではなく、多くのスポーツを経験することで神経系が発達する。特定の競技の同じ動きで身体を鍛えるのではなく、競技によって異なる動きを体験していくことで、体ができることが増えるという考え方である。

 現役のプロ野球選手の中にも、幼少期に他スポーツをしてきたというケースもなくはない。

 例えば、前田健太(ドジャース)、藤浪晋太郎(阪神)、菊池雄星(西武)、大谷翔平(日本ハム)が水泳をやっていたと聞くが、彼らがそろって投手なのは、水泳の何らかの動きがその後に関係しているかもしれない。

 根尾は岐阜県の飛騨市出身という地域性も手伝って、スキー競技に取り組んでいた。

 それも「習い事」に収まらない高いレベルであったため、今になって野球に生かされているというのは興味深い話であろう。

「体幹の強さに加えて、個人競技をやってきた強みというのもあるかもしれないです。根尾は練習中に群れたりしません。1人でなんでもしようとする。何事にもブレることはないですし、そこは根尾の強さなのかもしれないです」と西谷監督は根尾が培ってきたものに関心を寄せている。

【次ページ】 根尾もまた、最近流行りの文武両道アスリートである。

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