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涙の選手、怒る国民、居直る指揮官。
W杯を失ったイタリア「世界の破滅」。 

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弓削高志

弓削高志Takashi Yuge

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photograph byGetty Images

posted2017/11/14 18:15

涙の選手、怒る国民、居直る指揮官。W杯を失ったイタリア「世界の破滅」。<Number Web> photograph by Getty Images

イタリアのゴールをともに守り続けたブッフォンとボヌッチがピッチでかわした最後の抱擁は、あまりにも物悲しかった。

試合前、監督は「お前らで勝手にやれ!」と指揮を放棄。

 立て直すことはできなかった。代表監督ベントゥーラが頼りにならなかったからだ。

 カルチョの賢者ピルロをはじめ、多くの代表OBやメディアは、3-5-2と4-2-4に固執する老将の頑迷な戦術傾向を批判してきた。多くの選手たちがクラブで慣れ親しんでいる4-3-3の導入を進言されても、ベントゥーラは頑なに拒み続けた。

 現代表中で最高の攻撃センスを持つはずのFWインシーニェは、自身のベストポジションである3トップの左ウイングで起用されたことがない。プレーオフ初戦で4-2-4のサイドハーフをやれと途中出場させられた彼に、何ができたのか。ベントゥーラのイタリア代表では、クラブと同じプレーを求められる攻撃的な選手はほとんどいなかった。

 もともと指導者としてカリスマも実績もないベントゥーラは、選手たちからの信頼を失っていた。

 スペイン戦後にも一度、選手たちによる監督への造反騒ぎが取り沙汰されたことがある。W杯優勝経験のあるMFデロッシやDFバルザーリ、CL経験のある選手たちとベントゥーラの間には決定的な亀裂が生じていた。

 スウェーデンとのプレーオフ初戦でも、納得出来ない采配の末に為すすべ無く敗れた指揮官に、選手たちは三行半を突きつけていた。

 SKYイタリアの報道によれば、サン・シーロ決戦前の練習中、ベテラン選手たちが監督へ戦術変更を訴えたところ、「じゃあ、お前らで勝手にやれ!」とベントゥーラは激昂したという。

 選手たちはW杯のかかった大事な一戦を、自分たちだけで戦うことを決めていたのだ。これまでの予選と見違えるように戦うアズーリに感じた違和感の正体はこれだった。

デロッシは、自分の希望より勝利を望んだ。

「馬鹿言ってんじゃねえ! 俺たちは引き分けじゃダメなんだ! 勝たなきゃならないんだよ!」

 60分に途中出場を命じられたMFデロッシは、立場を無視してコーチを怒鳴りつけていた。

「インサイドMFの俺を入れている場合か、今プレーすべきは自分じゃなくFWだろうが!」

 歴戦の勇士であるデロッシは自らの出たい意思を封印し代表の勝利を望んだ。負ければ自らにとっても代表最後の試合とわかっていた。監督役としてベンチから指示を出し続けた。

 試合後、「俺は代表を心底愛していた。泣いたことも笑ったこともある。代表は人生の一部だった。俺はそれに別れを告げなきゃならない。今日は何て悲しい日なんだ」と呻いた。

【次ページ】 「W杯を逃した男たち」という汚名が一生続く。

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