スポーツ・インサイドアウトBACK NUMBER

ダルビッシュと滑るボール。
最強スライダーが打ち込まれた理由。

posted2017/11/11 11:00

 
ダルビッシュと滑るボール。最強スライダーが打ち込まれた理由。<Number Web> photograph by Getty Images

移籍マーケットをみれば、ダルビッシュ有の評価が落ちていないことはすぐに分かる。なにせ、彼のスライダーはメジャー最強クラスなのだから。

text by

芝山幹郎

芝山幹郎Mikio Shibayama

PROFILE

photograph by

Getty Images

 魔法の泥は効かなかったのだろうか。リーナ・ブラックバーン(1886~1968。ホワイトソックスの元監督)が発見した、あの有名なデラウェア河畔の泥は、効果がなかったのだろうか。

 いまだかつてないほど打ち込まれたダルビッシュ有の姿を見ながら、私はぼんやりとそんなことを考えていた。

 いうまでもないが、2017年ワールドシリーズのことだ。

 ダルビッシュは第3戦と第7戦に先発し、どちらの試合でもアウトを5つしか取れなかった。第3戦の被安打は6本で、第7戦が3本。三振はひとつも取れず、どちらの試合も1回3分の2で降板して自責点は4を数えた。2戦合計の防御率は21.60。だれもが眼を疑いたくなったのではないか。

新しいボールは、泥を擦り込んでから使う。

 報道はすぐに出た。「ボールが滑り、スライダーが曲がらなかった」というのだ。第3戦での降板直後、ダルビッシュがリック・ハニカット投手コーチにそう訴えた、という記事も新聞の電子版に出ていた。ビデオを見返すと、第3戦ではスライダーを14球投げて、空振りを一度も奪っていない。

 ワールドシリーズの使用球には金色の刻印が入っている。レギュラーシーズンでは青の刻印なので、使用球はシリーズ開始前に特注で作られる。素材は牛革で、製造はコスタリカ。監修はもちろん大リーグ機構だ。MLB上級副会長のピーター・ウッドフォークは「刻印以外はレギュラーシーズンと変わりがなかった」と述べている。もちろん新しい球は滑りやすいので、最初に紹介した魔法の泥が擦り込まれる。

 泥は、ニュージャージー州南部にあるデラウェア河の「秘密の場所」で採取される。製造元のリーナ・ブラックバーン・ラビング・マッド社は、32オンス(約1キロ)の缶を75ドルで販売している。各球団はそれを買い求め、試合前に手分けして擦り込む。最大の目的は事故防止だ。球が滑って、指がしっかりかからなければ、時速100マイル近い速球は危険きわまる凶器となる。

【次ページ】 ダルビッシュのスライダーの被打率は、凄まじく低い。

<< BACK 1 2 NEXT >>
1/2ページ
関連キーワード
ダルビッシュ有
ロサンゼルス・ドジャース

ページトップ