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国民全員でセリエA誤審を糾弾!?
ビデオ判定の礎は“名物法廷番組”。 

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弓削高志

弓削高志Takashi Yuge

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posted2017/11/05 07:00

国民全員でセリエA誤審を糾弾!?ビデオ判定の礎は“名物法廷番組”。<Number Web> photograph by Getty Images

今季からビデオ判定システムの本格運用が始まったセリエAだが、じつは約40年も前から映像を用いて疑惑のシーンを議論する人気番組があった。

“白黒つけなきゃ気がすまない”イタリア人気質。

「VARが困難な取り組みだということはわかっている。しかし、ビデオ判定導入はサッカーにおける重要な一歩だからね。レフェリーたちにとってもやり甲斐は大きい。大事なのは、時代やテクノロジーの変革へ柔軟に取り組んでいくことだ」

 VARプロジェクト総責任者ロセッティもまた、2度のW杯やCLなど国内外の一線で活躍した元名審判だ。02年日韓W杯決勝戦を裁いたコッリーナ然り、イタリアには名レフェリーを次々に生み出す“審判大国”の一面がある。

 イタリア紙の選手の採点・寸評は有名だが、採点評価を受けるのは審判も同じ。あらゆる試合のジャッジについて正誤を問われるのだ。生半可な気持ちではイタリアで審判はできない。

 いいかげん、というステレオタイプとは裏腹に、飽くなき探究心の現れか、ことサッカーに関してイタリア人は“白黒つけなきゃ気がすまない”職人気質がある。それに加えて、ビスカルディのTV番組が生み出した“国民皆批評家”の文化が、サッカー強国としての矜持を今も育んでいるように思う。

『ビスカルディの法廷』は1年の休止期間を経て、この晩夏にマイナー局でひっそりと再開した。ただし、司会は孫娘みたいな齢の女性タレントで、ビスカルディ本人が天に召された今、番組存続の可能性は小さい。

 ビデオ判定は現実になったが、サッカーはデジタルで構築されたビデオゲームとはちがう。プレーするのもジャッジを下すのも、生身でアナログな選手とレフェリーたちだ。だから、テクノロジーの時代にも論争は絶えることはない。

“しまった! 死ぬのを少し早まったか!”

 大往生したはずのビスカルディの高笑いが、天国から聞こえてきそうだ。

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