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ケインのワンマンチームではない!
レアル撃破トッテナムが見せた地力。 

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山中忍

山中忍Shinobu Yamanaka

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posted2017/11/04 09:00

ケインのワンマンチームではない!レアル撃破トッテナムが見せた地力。<Number Web> photograph by AFLO

ストライカーとしてワールドクラスに上り詰めつつあるケイン。スパーズ愛を貫くのか、それとも……。

ベイルがいるときも「ワンマン」扱いを受けた。

 とはいえ「ワンマンチーム」という表現は強烈だ。普段は舌戦を避けるポチェッティーノが「失礼なコメントを耳にするのは残念。私は彼のバルセロナを“メッシ・チーム”と呼びはしなかった」と、グアルディオラに反論したのも無理はない。中立的な立場からしても、トッテナムをワンマンチームと呼ぶのは憚られる。

 過去のプレミアで「ワンマン」と呼ばれても仕方のないチームとしては、アラン・シアラーが主将兼エースだった頃のニューカッスルが思い浮かぶ。現在のトッテナムは、プレミア歴代通算得点王を擁していながら優勝候補とはみなされなかったニューカッスルを総合力ではるかに上回っている。

 かつてもトッテナムはワンマンチーム扱いを受けていた。それはガレス・ベイルがレアルに去る直前の2012-13シーズン中のことだ。それに比べれば今季は当時を上回るキーマンが存在する。守護神のユーゴ・ロリスは共通だが、ヤン・ベルトンゲンとセンターバックコンビを務めるトビー・アルデルバイレルトは、同シーズンのマイケル・ドーソンを凌ぐ。ケインのサポート陣にしても、当時と同じムサ・デンベレの他にアリやエリクセンらが顔を揃えている。

マンU時代のファンニステルローイのような存在。

 とはいえ、現トッテナム最大のキーマンがケインであることは間違いない。

 昨季プレミアでは29得点、一昨季も25得点と、2012-13シーズンにエマニュエル・アデバヨール、ジャーメイン・デフォー、クリント・デンプシーが挙げた23得点を上回るゴールを、2年続けて1人でチームにもたらしているのだ。いずれのシーズンも、チーム得点が2位であるアリに10点以上の差をつけるケインは、トッテナムに最も勝利を呼び得る存在だと言える。

 もしケインを比較するなら、2002-03シーズンのユナイテッドにおけるルート・ファンニステルローイだろうか? ファンニステルローイは同シーズン、得点王となる25点を挙げて優勝に貢献している。

 ただ当時のユナイテッドは、最終ラインにリオ・ファーディナンド、中盤にはロイ・キーンとポール・スコールズ、左右のウイングにはライアン・ギグスとデイビッド・ベッカムを擁し、「ファンニステルローイのチーム」とは呼ばれなかった。その中でもアレックス・ファーガソン監督が優勝後に「素晴らしかった」と特別に評価した選手は、ラスト8試合で13得点を叩き出したファンニステルローイだったのだが。

【次ページ】 「ワールドクラスだと証明するための舞台」

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