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ロナウジーニョを干した男・クルピ。
就任濃厚ガンバで遠藤をどう扱うか。 

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下薗昌記

下薗昌記Masaki Shimozono

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posted2017/11/03 07:00

ロナウジーニョを干した男・クルピ。就任濃厚ガンバで遠藤をどう扱うか。<Number Web> photograph by AFLO

かつてセレッソで柿谷、香川、山口、清武、乾らを一本立ちさせたクルピ氏。同じ大阪の地でその手腕を発揮するのか。

明確だった長谷川監督の「勝ってタイトルを取る」。

 第一次黄金時代を築いた西野朗元監督のもとでガンバ大阪は“魅せながら、勝つ”という贅沢かつ、難解なテーマを常に追求し続けた。記憶はややもすると美化されがちだが「私以外の監督ならもっと多くのタイトルを取っていたのかもしれない」と西野元監督が退任時に認めたように、理想に殉じるがあまり、落としたタイトルも決して少なくはなかったのは確かである。

 一方、長谷川監督は対照的な現実主義者である。

「ガンバの監督は娯楽性と結果を求められる難しさがありますが」と長谷川監督に一度、問うてみたことがある。

 指揮官から返って来た答えは、実にシンプルかつ明解。「勝ってタイトルを取る。それが一番大事でしょ」だった。

 チームに欠けていた守備の意識を植え付け、就任以来、三冠を含む4つのビッグタイトルをもたらした長谷川監督から「卒業」し、今後は攻撃サッカーの再構築を目指すことになる。しかし、クラブは2012年以来となる重大な岐路に立たされていると言っても過言ではない。

クルピ氏に待ち受けるのは更地からの新築作り。

 かつてセレッソ大阪で指揮を執ったレヴィー・クルピ氏の監督就任が濃厚だが、攻撃サッカーの再構築は、決して容易い命題ではないのだ。

 家作りに例えよう。長谷川監督が就任した2013年は、攻撃サッカーと遠藤保仁という大黒柱がありながらも傾いた家のリフォームだけで良かったが、クルピ氏を待つのはいわば、更地からの新築作りである。

 梶居強化部長が当初からクルピ氏に白羽の矢を立てていたのは「攻撃的なサッカーを志向し、若手の起用法にも長けているから」である。

 新旧の日本代表や東京五輪世代となる初瀬亮、市丸瑞希、更にはガンバ大阪U-23で定位置を獲得したガンバ大阪ユースの芝本蓮ら、数々のタレントを擁するチームをクルピ氏に託すのは、決して間違いではない人選だ。

 ただ、レヴィー・クルピという名将は、無条件に攻撃サッカーを生み出す打ち出の小槌ではないことをクラブは知るべきであろう。

【次ページ】 タレント不足のサントスでは手堅いサッカーだった。

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